【イベントレポート】勝手にセレクト展①|森田アルミ工業が提案するノイズレス建材
5月16日~23日に無印良品グランフロント大阪(大阪市北区)で開催された、『Noizless』vol.3発刊記念イベント「勝手にセレクト展 -Parts for Home-」。無印良品の店舗の一角をお借りして、『Noizless』で紹介している建築パーツの展示を行いました。

最終日の5月23日(金)には4社のメーカーのご担当者をお招きし、トークセッション形式で製品開発に込めた想いを伺いました。
登壇者は、株式会社ユニオンの村田佳奈さん、株式会社 MUJI HOUSEの松本雄作さん、Tactile Material株式会社の堀田将矢さん、ケイミュー株式会社の藤田新次さんの4名。
今回のイベントレポートでは5回に分けて当日のトークの様子を紹介していきますので、ぜひご覧ください。
第1回目では『Noizless』の概要及び、森田アルミ工業が提案するノイズレスな建築パーツを紹介します。

建築パーツのことを知らずに家を建てる後悔をなくしたい。
〈内藤〉私、内藤と申しまして、森田アルミ工業の研究開発部の企画デザイングループのグループマネージャーと、rect建築設計事務所の室長、Noizlessのプロジェクトマネージャーをしております。よろしくお願い致します。

内藤正宏 1989年生まれ。一級建築士。山梨県甲府市の材木屋に生まれる。2014年 芝浦工業大学大学院理工学研究科建設工学専攻卒。同年 大手住宅系組織設計事務所勤務、2019年 森田アルミ工業株式会社勤務を経て、2021年株式会社レクトを設立。
私は大学を卒業後に住宅系の組織設計事務所に入社し、そこでデザイン・性能・コストのバランスを考えながら設計を行っていました。コストを考えながら設計をしていく中で既製品の建築パーツを活用するのですが、それが造作に見えるようにディテールの設計を工夫していました。
その中で既製品のデザインがもっと良くなってくれないかなと思い、2019年に建材メーカーである森田アルミ工業に入社しました。2021年には森田アルミ工業の中でrect建築設計事務所を設立し、建材の開発と住宅の設計の両方を行っています。そして、2022年には建築パーツのセレクトブランド『Noizless』の活動をスタートしました。
『Noizless』は「私にとっての普通を知る、選ぶ、暮らす」をコンセプトにしています。一見当たり前のことのように思われるかもしれませんが、家の中にはものすごくたくさんのパーツがあり、お施主さんがそれらのパーツのことをよく知らないまま家を建て後悔する…ということがあります。
そこでNoizlessでは、僕らがいいと思っている建築パーツをカテゴリーに分けて紹介しています。Noizlessを立ち上げて3年が経ちまして、今は41のアイテムを掲載しており、今後もVol.4、Vol.5と出していく中でカテゴリーや商品を増やしていこうとしています。
ちなみに僕らが建築パーツを選ぶ時、「適切なデザイン」「あるべき性能」「ふさわしい素材」の3つのバランスが良いことを基準にしています。本日はそんな『Noizless』の最新号Vol.3で紹介している建築パーツを手掛けるメーカーの中でも、大阪に本社を持つ会社さんを中心にお招きしこの後順番にお話を頂きます。
では、ここから「勝手にセレクト展 -Parts for Home-」のトークイベントをスタートさせて頂きます。まず最初に、当社森田アルミ工業からお話します。
2000年代からデザイン性の高い商品の開発に注力。
〈藤本〉こんにちは、森田アルミ工業営業2部の藤本です。本日はよろしくお願い致します。
藤本樹 1995年生まれ。森田アルミ工業株式会社株式会社 営業2部リーダー 2013年森田アルミ工業株式会社入社。製造部での勤務を経て、営業部に配属。
はじめに当社の歴史をご紹介します。森田アルミ工業は1972年にアルミの加工業者として創業しまして、主にオーダーメイドのエクステリアの製作を行っていました。
当社が成長したきっかけに、1980年代に先代の社長が自社開発を行った外付けのアルミ階段「ステアーズ」があります。こちらの商品は大手企業さんのOEMを契約し、特許も取っていました。
外部用階段『ステアーズ』
その特許が切れてから売上が伸び悩んでいたのですが、2006年に森田和信が社長に就任する数年前から、それまでやってきた屋外の商品だけでなく、デザイン性の高い屋内の商品を作り始めます。当初は社内にデザインに関するノウハウが十分になかったので、外部のデザイナーさんとコラボして室内パーティション『falce(ファルス)』を発売しました。
室内パーティション『falce』
その後デザインを内製化する体制を整え、2007年に室内物干しワイヤー『pid 4M(ピッドヨンエム)』を発売します。これが社内でデザインした初めての商品で、年間数万台売れるようになりました。はじめはpidのプラスチックパーツを外部の協力会社さんに製造を依頼していたのですが、コストや品質管理の観点からプラスチックパーツの内製化もするようになりました。
室内物干しワイヤー『pid 4M』
それから、商品の開発をする時は、営業担当が建築会社の設計士さんやコーディネーターさんにヒアリングをしてアイデアを得ていたのですが、それに加えて社内に設計士がいたら、もっと現場に寄り添った商品ができるのではないかと考え、2019年にrect建築設計事務所を立ち上げました。実際にお施主さんの家づくりをしていく中で出た課題やアイデアが森田アルミ工業の商品開発につながっています。
また、お施主さんが住み始めてからの感想を聞いたところ、建築パーツ選びでの後悔の声も聞こえてきたんです。そこで、メーカーとして何かできることはないかと考え2022年に『Noizless』を立ち上げました。
『Noizless』は私たち1社だけではできないので、他のメーカーさんにも協力を頂きながら取り組んでいます。さらに、建築会社さんにも協力を頂きながら、建築パーツのことをお施主さんにもっと知って頂くことで、より付加価値の高い家づくりができるようになれば…という想いで行っています。
森田アルミ工業が考える、空間に調和する建築パーツの数々。
〈藤本〉ここからは『Noizless』に掲載している森田アルミ工業の商品をいくつか紹介させて頂きます。
1つ目は室内物干しワイヤー『pid 4M』です。こちらは「隠す物干し」がコンセプトで、必要な時には最大4mのワイヤーを引き出して使いますが、使わない時にはワイヤーをボックスの中に収納できます。
室内物干しワイヤー『pid 4M』
2つ目は天井付け物干し『kacu(カク)』です。こちらは洗濯物を干していない時に「物干しに見せないこと」をコンセプトにしています。円柱型の物干しが多い中、角材を使用しているのが特徴です。物干しを取り付ける場所は窓の近くが多いですが、四角い窓となじんで違和感がなくなるようにあえて角材にしています。
天井付け物干し『kacu』
3つ目は巾木です。当社では3種類の巾木を製造していて、その1つ目が極小アルミ巾木『albase(アルベース)』です。高さを業界最小の12mmにしていることが最大の特長です。albaseをフローリングの上にビスで固定して、その上に石膏ボードを載せて使う仕組みです。デザインに振り切った商品のため、施工の難易度は高めになっています。
極小アルミ巾木『albase』
その施工性の課題を解決したのが後付アルミ巾木『fitbase(フィットベース)』です。こちらは施工方法がガラリと変わりまして、最初に樹脂パーツをタッカーで壁に固定した後、その上にアルミのパーツをはめ込む仕組みになっています。下のところに目透かしのような空間をつくって影ができる演出をしているのも特徴です。
後付アルミ巾木『fitbase』
3つ目の巾木は、後付樹脂巾木『fitbase lite(フィットベースライト)』です。こちらは接着剤で固定するタイプで、他の2つと同様にタッカー痕が出ない巾木になっています。素材が樹脂なので、アルミ製巾木の1/3程度の価格に抑えられています。
後付樹脂巾木『fitbase lite』
巾木以外にも造作材をいろいろ製造していまして、極薄窓枠『fitframe(フィットフレーム)』もお薦めの一つです。見付けが業界最薄の4mmとなっていて、非常にシャープに見えるのが特長です。しゃくりも作っているので、現場では差し込んでビスで取り付けます。
極薄窓枠『fitframe)』
次の造作材はアルミ床見切り『keid(ケイド)』です。床見切りはステンレス製・真鍮製のフラットバーやLアングルが多かったですが、現場での加工が難しいことが課題になっていると聞きました。そこで私たちはアルミ製の床見切りを開発しました。T型のかぶせるデザインにすることで、施工性を高めているのも特長です。今月新たに真鍮色に近いゴールド色を追加しました。
アルミ床見切り『keid』
アルミ床見切り『keid』(ゴールド)
最後にご紹介するのが、今月発売されたばかりの新商品、エントランスユニット『Brik(ブリク)』です。これはポストとインターホンカバーと表札が一体化した商品で、最大の特長は奥行が全てそろっていてフラットになっていることです。Brikを使うことで、バラバラになりがちなポスト・インターホン・表札がまとまり、玄関周りを美しく整えることができます。ポストとインターホンカバーは分かれているので、それぞれ単体で購入することも可能です。
エントランスユニット『Brik』
(Brikの詳しい開発経緯についてはNoizlessの記事「玄関周りに統一感を生み出す、ミニマルなエントランスユニット」をご覧ください)
当社の商品紹介は以上になります。私たちは建材を良くしていくことで、日本の家がより良くなるための手助けができればと思っています。また、今後の商品開発のためにも、「こういう商品がほしい」というご要望を頂けたらと思いますので、これからもどうぞよろしくお願い致します。
勝手にセレクト展のイベントレポート第1回はここまでです。第2回では、株式会社ユニオンの村田佳奈さんのお話をご紹介します。
【コラムで紹介したアイテム】
