【暮らしの中の建築パーツ】白とグレージュを基調とした穏やかな住まい(中編)
『暮らしの中の建築パーツ』第3回目、新潟市江南区に暮らすOさん夫婦のお住まい。中編ではリビングに使われている内装仕上げ材を見ていきます。
空間に調和する下足入れと四角い物干しバー
玄関ドアを開けると土間が真っすぐ奥へと伸びており、正面の大きなFIX窓の向こうのテラスへと視線が抜けていきます。
玄関とリビングの間に仕切りがない開放的なつくりも特徴。玄関にシューズクロークはありませんが、壁一面に大きな下駄箱が造作されており、そこにたっぷりと靴を収納できます。
〈奥様〉 壁と一体化しつつも、ある程度存在感を出したいと思い、造って頂いた下足入れです。
〈ご主人〉 家づくりをしている時に、ちょうど仕事で新しいスパ施設の建築現場に携わっていて、そこで女性用のクロークに使われていたポリ合板の色と柄がいいなと思い、同じLP-682(アイカ工業)を採用しました。くすんだ感じが空間に合っていて気に入っています。あと、壁のように見せたかったので、取っ手がないデザインにして頂きました。
〈松尾さん〉 アイカ工業のポリ板やメラミンはすごい技術で、天然木の突板と並べても違いが分からなくなってきています。取っ手を付けずに“手掛け”を希望されることが最近は増えてきていますね。
〈奥様〉 それから下足入れの隣にある物干しバーのkacu(森田アルミ工業)は角ばったデザインがいいなと思って選んだものです。この物干しはコートや濡れた上着を掛けておくのに便利ですし、ただハンガーを掛けておくだけでもかっこいいですね。
壁紙はマットな白をベースに、グレージュをプラス
リビングの中を見渡すと、バランスよく配された窓から注ぐ光が白い壁にやわらかい陰影をつくり出しています。こちらのマットな質感の壁はビニルクロスで、XB-747(※現在の品番はXB-152)(リリカラ)。また、天井はグレージュのビニルクロスで、SP2836(サンゲツ)を採用しています。
〈ご主人〉 この白い壁紙はCraftさんの完成見学会で初めて見て、塗り壁のような質感がビニルクロスっぽくないなと思い採用することにしました。それまで見てきたビニルクロスって、賃貸アパートやマンションでよく使われている、いかにもビニルクロス感があるものだったので。
〈奥様〉 ただ、壁も天井もすべて白だと落ち着かない感じがすると思い、天井にはグレージュのクロスを選びました。そうしたことで、よりリラックスできる落ち着いた空間になったと思います。
〈松尾さん〉 壁と建具を白にして垂直面に統一感を出し、天井の色だけを変えるというのは、まとまりやすいコーディネートですね。私はベースクロスは無地が好きなんですけど、ここで使っているXB-747(現XB-152)はよく最初に紹介します。そうすると、いろいろなクロスを見て頂いた後に「やっぱりこれがいいね」となることが多いですね。あとは、場所ごとにアクセントクロスを入れるかどうかという感じです。
昔は壁の仕上げに水性塗料もよく使っていたのですが、XB-747(現XB-152)は引いて見た感じがそれとよく似ています。塗装にするとメンテナンスが少し大変になりますし、コスト面でもこのクロスはいいなと思います。XBシリーズは多少厚みもありますので、下地の凹凸を拾うことも少なくきれいに仕上がりますね。
寸法安定性とコストパフォーマンスが高い、幅広の突板フローリング
床材はラスティックフェイス(ノダ)で樹種はエルム。合板とMDFの基材に、天然木を薄くスライスした突板(つきいた)を張り、表面をコーティングしたフローリングです。エルムは日本名では楡(ニレ)で、タモとよく似た木目を持っています。
〈ご主人〉 私たちは幅が広い床がいいなと思っていて、この床材を選びました。あと、オークの黄色味があまり好きじゃなくて、グレージュのクロスとも調和する少しくすんだ色味のエルムにしました。
〈松尾さん〉 コスト面や変形がしにくいというメリットがあり、突板のフローリングを薦めることが多いですが、中でもノダのラスティックフェイスは光沢感がなく表面の加工がざらざらしていて人気がありますね。特にエルムを採用する方が多いです。
〈奥様〉 幅の広いフローリングなのでリビングが広く見えますし、夏にはだしで過ごしていても気持ちいいですよ。
スタイリッシュな洗面スペースは、フックにもこだわりあり
1階の奥には水回りがまとめられていますが、洗面スペースは独立した空間に配されています。こちらは水濡れに強いメラミン化粧板LJ-10186(アイカ工業)と人工大理石の洗面ボウル、オルロノフ(サンワカンパニー)を組み合わせた造作洗面台。床材にはクッションフロアE2146(シンコール)を使用しています。
〈ご主人〉 リビングには白以外にグレージュを使っていますが、どこかにグレーも入れたいと思っていて、それで洗面台や床材などにグレーを使いました。洗面台の下の棚板はリビングの造作家具と同じグレージュにしています。
〈奥様〉 朝の忙しい時間帯でも2人並んで準備ができますし、ボウルも大きくてマットな質感なのも気に入っています。
タオル掛けは自分たちで用意したWall Hook(MOEBE)を取り付けて頂きました。MOEBEは鏡が有名ですが、このフックもとてもシンプルで好きです。
– 中編はここまでです。次回の後編では、O邸の床見切りや巾木などをご紹介します。
【この記事で紹介した建築パーツ】
ガルバリウム鋼板 極み-MAX® K005(JFE鋼板株式会社)
ウィルウォールT&Gパネル(チャネルオリジナル株式会社)
エコ・ウッド・トリートメント(ブライトン株式会社)
ジエスタ2 M17型 K2仕様(株式会社LIXIL)
vik(森田アルミ工業株式会社)
ポリエステル化粧合板 LP-682(アイカ工業株式会社)
kacu(森田アルミ工業株式会社)
ビニルクロス XB-152(リリカラ株式会社)
ビニルクロス SP2836(サンゲツ)
ラスティックフェイス(株式会社ノダ)
メラミン化粧板 LJ-10186(アイカ工業株式会社)
オルロノフ(株式会社サンワカンパニー)
クッションフロア E2146(シンコール株式会社)
Wall Hook(MOEBE)
【DATA】
O邸
新潟市江南区
延床面積 106.54㎡(32.16坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2022年3月
設計・施工 株式会社Craft
株式会社Craft
https://www.craft-niigata.com/