【暮らしの中の建築パーツ】白とグレージュを基調とした穏やかな住まい(前編)
『暮らしの中の建築パーツ』では、新築やリノベーションをしたご家族の家を訪ね、それぞれの建築パーツを選んだ理由や感想をご紹介します。
第3回目は新潟市中央区の工務店、株式会社Craftが設計施工を行った、新潟市江南区に立つOさん夫婦の住まいです。Craftの代表・松尾貴弘さんは、大学を卒業した1996年以降ずっと住宅業界で建築士としてのキャリアを積み重ね、2016年に独立して株式会社Craftを設立しました。
「丁度いいをかたちに」というコンセプトを掲げており、気張らないリラックスした雰囲気の空間づくりや、使い勝手のいい設計を特徴としています。
今回訪れたO邸ではどのような建築パーツ選びがなされているのか、見ていきましょう。
外壁材は高い耐候性があるガルバリウム鋼板
O邸が完成したのは2022年3月。「新築マンションや中古マンション、建売など、持ち家のあらゆる選択肢を見てから注文住宅を建てることに決めました。多くの住宅会社を見た中でCraftさんに決めたのは、おしゃれさやセンスをこれ見よがしに出さず、全体の調和を取るさり気なさに共感したからです」(ご主人)。
奥様は「松尾さんの温和で優しい人柄に惹かれ、せっかく家を建てるなら松尾さんにお願いしたいと思いました。私たちの意思を尊重しつつ、プロの視点でまとめてくださるんです。私たちがやりたいことでも、松尾さんがお薦めできないことはその理由を丁寧に説明してくださいました。止め方も優しかったです(笑)」と話します。
住宅街の角地に立つO邸は白いガルバリウム鋼板 極み-MAX® K005(JFE鋼板)の外壁に覆われた家。
〈ご主人〉 私たち夫婦は二人ともガルバリウム鋼板の外壁が好きで、色は特に白が好きです。グレーやシルバーも素敵ですが、やっぱり白にして良かったなと思っています。汚れが目立ちやすいという欠点はありますけど(笑)。ガルバリウム鋼板の外壁を選ぶ時には妻がアポロルーフかエバールーフかで迷っていました。
〈松尾さん〉 エバールーフは板に折りが入っていて強度が出るんですけど、表面が波打ちしにくいために堅い印象になります。ハンドメイドの雰囲気が好きな人にはアポロルーフの横張りをお薦めしています。そうではなく、きちっとした印象にしたい方はエバールーフが合っていると思います。同じ金属でも印象がかなり変わるので好みが別れるところですね。
ガルバリウム鋼板 エバールーフ事例 (写真提供:株式会社Craft)
当社では外壁にガルバリウム鋼板を使うことが多いですが、その理由は軽くて強くて信頼性が高いからです。私が25年前に携わった住宅のガルバの外壁も、未だに錆などのダメージは受けていません。何もメンテナンスをせずに長く使える外壁材だと思います。
株式会社Craft 代表 松尾貴弘さん。1973年新潟県五泉市(旧村松町)生まれ。1996年東北工業大学工学部工業意匠学科空間デザインコースを卒業後、1996~1997年に新潟県内のハウスメーカー勤務。1997~2015年、株式会社高田建築事務所勤務を経て、2016年に株式会社Craftを設立。機能(性能)・デザイン・コストのトータルバランスの良い家を目指して設計を行っている。
〈奥様〉 家全体が大きく見えるのがいいなと思い、最終的にアポロルーフを選びました。今日はあまり日が出ていませんが、晴れの日に見る白いガルバはとても美しいですね。
〈ご主人〉 それから、ポーチ部分の壁だけは木を張っています。外壁はガルバの他にもう1種類使いたいなと思っていて、はじめは塗り壁を検討していました。でも、Craftさんの見学会でレッドシダーが使われているのを見て、色味がすごく良かったので同じものを採用しました。
〈松尾さん〉 これはウィルウォールT&Gパネル(チャネルオリジナル)のレッドシダーで、エコ・ウッド・トリートメントという保護剤を塗って仕上げています。一度塗ると、その後の塗り替えが必要ないといわれている保護剤です。保護剤自体は透明ですが、塗ると樹種によって違う色に変化するんですよ。竣工から2年が経って、さらに色味が変わってきています。
さり気なく木目が見えるシンプルな鋼製ドア
レッドシダーの壁と違和感なく調和しているシンプルな玄関ドアはジエスタ2M17型K2仕様(LIXIL)。ダークブラウンの単色のドアと思いきや、うっすらと木目が見えます。
〈ご主人〉 ショールームで一つ一つ引き出して選んだドアです。シンプルなデザインがよくて、窓が付いていないものを選びました。濃い色味で木目が際立ちすぎないので、フェイク感もあまり出ていなくていいなと思いました。
〈松尾さん〉 昔は玄関ドアはこだわって造作もしていたんですが、最近は性能や使い勝手の良さから既製品のドアを使うことが多いですね。シンプルなデザインのものが増えてきていますので、LIXILの無地の玄関ドアをお薦めすることが多いです。LIXILはバリエーションも多いのでお客さんもストレスなく選びやすいと思います。
ちょっと荷物をかけるのに便利な、さり気ないフック
玄関ドアの左手に見えるのは玄関用マルチフックvik(森田アルミ工業)。傘を掛けたり、愛犬のリードを掛けたり、玄関前で重宝するアイテムです。やわらかい樹脂で覆われており、うっかりぶつかってもケガをしにくい安全性も特長です。
〈ご主人〉 私は家に帰ってきた時に傘を掛けるのによく使っています。あとは、家の中に入る前に植栽に水やりをするんですが、その時にカバンを掛けたりしています。
〈奥様〉 見た目がいいなと思って私の方で支給して付けてもらったもので、子どもが生まれてからよく使うようになりました。抱っこひもで子どもを抱っこして両手が塞がっている時、いったんこのフックに荷物を掛けられて便利ですね。
それから、家族や知人が野菜などの届け物を入れた袋をここに掛けてくれたり、配送業者の方が雨の日に「置き配」をする時にビニール袋に入れて掛けてくれることもあります。
– 前編はここまでです。次回の中編では、O邸の内装仕上げ材をご紹介します。
中編はコチラから→
【この記事で紹介した建築パーツ】
ガルバリウム鋼板 極み-MAX® K005(JFE鋼板株式会社)
ウィルウォールT&Gパネル(チャネルオリジナル株式会社)
エコ・ウッド・トリートメント(ブライトン株式会社)
ジエスタ2 M17型 K2仕様(株式会社LIXIL)
vik(森田アルミ工業株式会社)
【DATA】
O邸
新潟市江南区
延床面積 106.54㎡(32.16坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2022年3月
設計・施工 株式会社Craft
株式会社Craft
https://www.craft-niigata.com/