【青木律典の住まい考】 第一回「外観プロポーション」

新しくはじまりましたこのコラム。
デザインライフ設計室の青木律典が担当いたします。

家づくりに正解や不正解はありません。そのため、同じ条件であっても携わる建築家や施工会社によって出来上がる住宅は千差万別、様々です。私自身は、定められた法規の中で、周辺環境を観察しながら、建て主の要望や与えられたコストに配慮し、居住性に直結する性能面に気を配りつつ、その先にある豊かな住まい、建て主にとって丁度いいと感じられる住まいを提供したいと思いながら家づくりをしています。

このコラムでは、私が家づくりをする際に気に掛けていること、こだわりを持っておこなっていることをこれまでの設計事例を用いてご紹介しながら、「佇まいが美しくなる家づくりの工夫や配慮」について綴ってみたいと思います。

[プロフィール]青木律典 建築家・デザインライフ設計室代表
「丁度いい住まいと暮らしをつくる」ことをテーマに掲げ、建て主のライフスタイルに合致したバランスのとれた住宅を手掛けている。


初回は、「外観プロポーション」についてです。
プロポーションという言葉はそのままでもニュアンスは伝わると思いますが、日本語に直すと均整、割合、比率、釣り合いなどということになるでしょうか。私は全体の中でのバランスを気にしながら物事を決めていることが多いので、プロポーションについても、その場面での様々なバランスを気にしながら整えていると思います。

それでは、具体的にこれまでに設計した戸建て住宅の事例を用いて、外観のプロポーションについてご紹介していきます。

 

外観プロポーション事例①「格子出窓の家」

photo: Tomoko Osada

道路に面した正面に格子が取り付けられた外観の住宅です。格子を取り付けたのは、飛来物から窓を守り、防犯性能を高めたいという建て主の要望から発想を膨らませています。

 

photo: Tomoko Osada

一般的には、シャッター付きの窓にしたり、強化ガラスを用いることをはじめに考えるのではないかと思います。ここでは既製品で解決するのではなく、建て主の要望を満たしつつ、建築的にも機能を持たせる方法で解決したいと思い、考えを巡らせた上で格子を設けることにしました。

 

photo: Tomoko Osada

格子を設けたことで、室内から外を見た時には、窓の外にある格子を挟んで外とつながっているように感じられることから、心理的な距離が生まれて安心感が増しています。また南面からの日差しを角度によって抑制することができますし、外からの視線をやわらげる効果もあります。建て主からの要望を受けて発想を膨らませたことが、内部空間の構成と呼応して幾つかの効果を持ちつつ、外観を形づくっています。

 

photo: Tomoko Osada

外部からの要件に応えながら内部の効果を考えることを繰り返していくことが、それぞれの要件に整合させていくことになり、プロポーションを整えていくことにつながります。

格子自体の幅と隙間は内外からの見え方や機能的な効果を検証し、少し引いて見た時の全体のバランスを考慮して寸法を決めています。高さ方向については、格子の上側の位置はバルコニーの手摺を兼ねる高さとし、下側の位置は人が立てない高さに設定しました。

ここでは、外観の正面を見た時のバランスと機能的な要因を考慮しました。もともとの役割があって、その役割は満たしながら、その他にも機能を付加しつつ、全体のバランスを整えていき、見た目にも良い佇まいを生み出そうとしています。

photo: Tomoko Osada

 

 

外観プロポーション事例②「高基礎の家」

次の事例です。

photo: Tomoko Osada

道路から路地状の土地が奥に向かって伸びています。いわゆる旗竿地に建つ住宅です。玄関は外階段で数段上がった場所にあります。玄関のある場所まで、基礎コンクリートを高くしているので、一般的な木造住宅に比べると基礎が高いことが特徴のひとつです。

 

photo: Tomoko Osada

あえてコンクリートの基礎を高くしたことには幾つかの理由がありました。ひとつは隣接する土地に高低差があることです。南側隣地の土地が約1m高いため、万が一に備えて基礎コンクリートを高くすることで対応しようと考えました。

同時に基礎を高くすることにより、南側隣地との高低差がほぼ無くなり、南側からの光を取り入れやすくなります。明るい家にしたいというクライアントの要望に応えるひとつの方法になると感じました。外的な要因が発端となって基礎を高くすることを考えていきましたが、玄関の床レベルが通常よりも高くなることで、断面的に多様な構成が可能になるというメリットも生まれました。

 

photo: Tomoko Osada

具体的には、1階に配置した子供室の床レベルを玄関よりも下げることで、天井の高い部屋が可能になりました。天井が高いことで将来の暮らしの変化に対応しやすくなると思います。

 

photo: Tomoko Osada

また、室内の階段下にあたる部分を利用して屋根のある自転車置場を外側に設けたり、高くなった基礎の下を収納スペースとしています。

 

photo: Tomoko Osada

この住宅のように周囲を隣家に囲まれた旗竿地の場合、建物の外観はあまり見えませんが、そんな時もプロポーションは気にしています。

建物の形は内部空間と呼応することで片流れの屋根形状をしています。北側から南側に向かって屋根が上っていきますが、内部空間は南側にロフトを設けるような多層構成になり、内部の要件が外観を形づくることにつながります。

photo: Tomoko Osada

道路側から敷地の奥を見た時に、外階段が見えるので玄関の位置は分かりますが、玄関扉が直接見えないようにくぼんだスペース(ポーチ)を設けています。ポーチがあることで雨に濡れずに扉を開閉することができる機能性もあり、外壁面が平滑になり過ぎないようなアクセントにもなっています。正面となる東側の外壁面には、窓を並べて配置していますが、玄関ホールに光を届けながら視線を制御するために窓の高さや大きさを検討して、内部と外部のデザインが一致するようにプロポーションを整えています。

 

photo: Tomoko Osada

このように必要な機能や用途がはじめにあり、そこにクライアントの要望を重ね、室内の要件と合致するように外観のプロポーションを整えていくことで、建築的な確かさを見つけ出そうとしています。

 

 

外観プロポーション事例③「戸塚の住宅」

次の事例です。

photo: Tomoko Osada

道路から少し高い場所に建つ住宅です。敷地の中に高低差があるような土地に建っています。道路側から外階段を数段上がって玄関に至ります。

 

photo: Tomoko Osada 

外階段の段数が多くなり過ぎないように、道路レベルに玄関を近づけようとしたことで、室内に段差のある内部空間が生まれました。

 

photo: Tomoko Osada

外観は壁面が多く寡黙で閉じた印象です。道路を挟んだ北側にはマンションが建っているため視線が合わないように壁で目隠しをするようにデザインしています。室内側は閉鎖的になり過ぎないように2階のリビングと連続する北面にテラスを配置しています。

 

photo: Tomoko Osada

このテラスは屋根と壁で覆った半屋外空間です。先に触れた北側正面のマンションのことを考慮したつくりですが、テラスの壁と屋根の一部を開放することで光と風を取り込むように工夫をしています。このテラスの開口が外観にもあらわれることで、シンプルな外観にアクセントを加えています。

 

photo: Tomoko Osada

建物は大きいボリュームと小さいボリュームが少しずれてくっついた形をしています。

片方のボリュームが小さく屋根が低くなっているのは高度斜線に配慮したためですが、建物が2つに分節されていることで建物全体の大きさを小さく見せる効果があります。道路よりも高い位置に建つ建物は、道路からは見上げるようになるので、圧迫感を軽減することも考慮しています。

この住宅でも内部と外部を行ったり来たりしながら、内部構成と外部にあらわれるデザインに違和感が生じないようにそれぞれのプロポーションを整えています。

photo: Tomoko Osada

 


今回は3つの戸建て住宅をご覧いただきながら、外観のプロポーションという切り口で家づくりをする際に考えたことや気に掛けたことについてご紹介してきました。

どの事例も、「こういうデザインにしたいからこうした」ということではなく、具体的な制約や与条件があり、そこを上手く取り込み活かしながら、制約や与条件があることを感じないように整えていることが分かります。

大切なのは、デザインが先に優先されるのではなく、必要な要素によって形づくられたデザインが違和感なく、ごく自然に感じられるように整えられているということだと思いますし、そのための工夫と配慮を積み重ねることだと思います。

 

プロポーションを整えることは家づくりをおこなう上での要素のひとつですが、プロポーションが整うことで佇まいが美しい住まいをつくることにつながると思います。

ここまでご紹介してきたように、出来上がった住まいの様子だけでなく、設計を進めていく中での思考の過程や葛藤、背景にある設計の意図などが垣間見えることで、設計の奥深さが少しでも伝わると嬉しく思います。

次回も別の切り口から、設計の奥深さをお伝えできるようなことを綴りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

 

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