Session Nagoya「上質な家づくりに共通する視点」(後編)
イベントレポートの後編では、登壇者のみなさんに追加予算の使い方や社内での教育について伺います。
追加予算を自由に使えるなら、何を提案するか?
〈藤本〉では次の質問に移ります。

仮に、標準仕様に十分満足しているお施主様がいて、「+5万円・+30万円・+50万円」の追加予算を自由に使えるとしたら、それぞれどこに・どのような商品や工夫を提案しますか?という質問です。

三交不動産の吉野さんはこのように回答されています。
5万円:照明・水回りのアクセサリー・収納
30万円:断熱性能・キッチンやバスの設備・造作家具・収納
50万円:無垢材の床や壁・エコ設備・天井高や開口部の間取り変更
それぞれのご説明をお願いできますか?

〈吉野さん〉追加予算5万円だったら、アクセサリー類をアップグレードするとおしゃれになりますね。この場合カワジュンさんの製品を提案することが多いです。あとは間接照明を入れて空間のノイズをなくすとかですね。
追加予算30万円でしたら、キッチンの天板をよりランクの高いものに変えたり、メンテナンス性のいいレンジフードにしたりとか、設備関係のアップグレードなどを提案します。
追加予算50万円の場合は、YKKAPさんのAPW651など、木製サッシを提案したいですね。質感がすごく良くて、特に木が好きな方の満足度を上げられる窓です。
〈藤本〉ありがとうございます。次に住友不動産ハウジングの殿最さんからは、このように回答を頂いています。
5万円:森田アルミ工業の商品(床見切りや階段手摺)
30万円:天井高(H2,400→H2,600)、ダウンリビング
50万円:テレビ壁掛け部分、住宅設備
森田アルミ工業の製品を挙げて頂きありがとうございます。
追加予算30万円で天井高を上げるということですが、やはり空間の印象は大きく変わりますか?
〈殿最さん〉開放感をつくり出す要素として窓と天井高があります。ちなみに天井高はただ上げるだけでなく、ダウンリビングにしたり、折り上げ天井にしたりすることで空間の印象を変えることができます。
先程お見せした事例ではリビングの床を30cm下げて、20cm天井を上げて、さらに折り上げ天井で20cm上げているので、リビングに座った時に3m以上の開放感が得られます。

それから追加予算50万円で「テレビの壁掛け部分」を挙げていますが、これも先程の事例で紹介した部分ですね。壁に使っている面材や補強など諸々を合計した金額です。

本物の木を使う場合はさらに倍くらいの金額になったので、アイカ工業さんのリブパネルという代替品を見つけていい提案ができたと思っています。
あと、追加予算50万円では「住宅設備」のアップグレードも提案したいことです。住宅設備は弊社の強みでもあり、例えばキッチンの天板はセラミックが標準グレードになっています。

追加予算があれば、そこに背面収納を付けたり、形をアイランドにしたりできます。あとはボッシュやミーレなどの食洗機を入れることもできます。

〈藤本〉ありがとうございます。ところで、殿最さんの方で森田アルミ工業の見切りを使って頂いていますが、お客さんの反応はどうでしたか?
〈殿最さん〉めちゃくちゃいいです。やっぱり一般的な見切りだと太いじゃないですか。スマートな見切りを求めている方が多いので、今の家づくりに合ったいい商品だと思います。
〈藤本〉嬉しいご感想をありがとうございます。あとレクト一級建築士事務所の廣戸さんからは次の回答を頂いています。
5万円:ポスト
30万円:幅広フローリング
50万円:木製玄関ドア
これらのご説明をお願いできますか?
〈廣戸さん〉正直なところ、標準仕様で十分満足されている場合は、それ以上建物にお金を掛けなくてもいいと思っています。
また、お客さんによって重視するものが違うので、お客さんによって提案も変わるんですが、今日はせっかくなので森田アルミ工業の製品の中からポストを挙げてみました。

玄関周りは一番人目に付きますし毎日通るところですので、アップグレードによる満足感が得られやすいと思っています。
追加予算50万円の場合は、ユダ木工さんの木製ドアですね。
追加予算30万円で挙げている幅広のフローリングもよく使うんですけど、森田アルミ工業のWOLD(ウォールド)は幅が30cmもあります。
幅広のフローリングを使うとより広がりが感じられますし、空間全体の質感を高められますのでお薦めしたいです。
社内やチーム内で行っている教育は?
〈藤本〉ありがとうございます。次の質問に行きたいと思います。

上質な家づくりを安定して再現するためには、教育がとても重要だと思います。社内やチーム内で行っている教育や取り組みがあれば教えてください。という質問です。
住友不動産ハウジングの殿最さんの回答は「SNSを活用した研修」とのことですが、どのような取り組みですか?
〈殿最さん〉SNSにアップされている空間を再現するにはどうしたらいいか?を社内で話し合っています。また、写真から空間を把握する能力を鍛えてほしいので、写真を元に図面を描いてもらうようにしています。そうすることで、何か提案をする時に間取りの提案も合わせてできるようになるんですね。これは私のやり方ですが、それを部下にも伝えています。
〈藤本〉ありがとうございます。次に三交不動産の吉野さんからは「マニュアルの作成、属人化しない組織づくりを意識」と回答を頂いています。ご説明をお願いできますか?
〈吉野さん〉施工基準書とか品質管理プログラムとか社内で作られているマニュアルがあり、それらを活用することで新しく入った人はやりやすくなっていると思っています。
それらのマニュアルを定期的に作り直すんですけど、メンバーがマニュアル作りに参加すること自体が教育になっていると感じています。
それから、同じ建物にいろいろな人が携わりますので、構造計算とか現場検査とかは一人の人間に任せずに、ダブルチェックができる体制にすることが大事だと思っています。

〈藤本〉ありがとうございます。最後にレクトの廣戸さん、「日頃から建築事例や街並みにアンテナを張る。完成物件は見学会を通して意見交換する機会を設ける」ということですが、説明をお願いできますか?
〈廣戸さん〉「建築事例や街並みにアンテナを張る」というのは、自分の引き出しを増やすために行っています。教育っていうと、うちの事務所は私ともう一人の内藤しかいないので、お互いの物件を見に行って意見交換をしたり、あとは森田アルミの社員の方に見てもらったりもしています。建築の設計者ではない人の意見を聞くと、想像していなかった質問や感想を頂けて勉強になります。
あとは、内藤が展示会で海外に行った際には、現地の建築についても共有してくれるので、いい刺激になっています。

今感じていることや、今後への思いは?
〈藤本〉ありがとうございます。次が最後の質問になります。

建築業界全体について、今感じていることや、今後への思いをお聞かせください。ということで、吉野さんからは「AIに代替されない職人を大切に」と回答を頂いています。

〈吉野さん〉設計業務はAIに代替されていく気がしているんです。土地の条件とお客さんの要望を入れたら家が何パターンも作られて、その中のどれがいいか?みたいな時代が遠くないうちに来ると思うんですね。
そんな時代になっても職人さんの現場作業はAIに代替されていかないと思っています。職人さんの世界は高齢化が進んでいますし、どんどん人が少なくなっていますけど、建築業界全体で職人さんを大事にする必要があると思っているところです。
〈藤本〉ありがとうございます。次に殿最さん、「提案力を高めるために協力していきたい」とのことですが、ご説明をお願いします。
〈殿最さん〉私は営業から始まって、プランの打ち合わせをして、コーディネーターにサポートをしてもらいながら打ち合わせを進めていますが、一人じゃ家づくりはできないなあと感じています。
今日は交流会もあるということなので、自分にはない知識を吸収できたらと思っています。お客さんの求めるレベルが高くなってきていますが、みなさんのお力をお借りしながらいい家を提案していきたいと思っています。
〈藤本〉ありがとうございます。最後に廣戸さん、「『普通』をアップデートしていきたい」のご説明をお願いします。
〈廣戸さん〉近年、工事費の高騰とか、金利の上昇とか、家を持つことのハードルが高くなっています。そんな中で造作の建具とか家具とかを造る選択肢が取りにくくなり、最近は既製品を使うことが増えました。
昔は「既製品ちょっと野暮ったいなあ」と思っていたんですが、最近はシュッとしたものも増えているので、造作でなくても洗練された空間になるように設計をしていきたいと思います。
商品開発もやらせてもらっているので、既製品を開発する側として既成概念というか「普通」をアップデートしていくと、業界全体が良くなっていくんじゃないかなと思っています。

〈藤本〉ありがとうございます。私からの質問は以上になります。最後に弊社社長からご挨拶をお願いできればと思います。
〈森田〉森田アルミ工業の社長の森田です。本日はお忙しい中お越し頂きまして誠にありがとうございました。登壇者のみなさん、本当に貴重なお話をありがとうございました。

我々は製造メーカーということでオリジナル商品にこだわっている会社です。なるべく世の中にないもので、新しい価値を生み出す製品をつくっていきたいというのをモットーにやっています。
当然のことながら、世の中の流れを見据えて商品化を日々検討しているんですけど、実際にはエンドユーザーさんがどんな使われ方をしていて、どんな改善点を感じているかという生の声を聞く機会がなかなかありません。
そういった意味で今日は我々がつくった製品がどういうふうに選ばれて、どういうふうに使われているか、高い解像度でお話を聞けたので感謝しています。そして、多くのお施主さんにとって一生に一回の家づくりという尊いことに、私たちも携われているんだなあと改めて感じることができました。
我々は製造業ということで、このようなイベントは不慣れでして、2年前くらいにスタートしたばかりです。運営上の不手際もあったかと思いますが、これに懲りずまた開催をして参りたいと考えています。みなさんにとってより良い時間になるよう精進したいと思います。今日はありがとうございました。
〈藤本〉ありがとうございます。この後、交流会を用意しておりますので、ご参加をされる方はサンプルを見て頂いたり、名刺交換をさせて頂いたりできればと思います。本日はありがとうございました。

以上、前編・中編・後編に渡って「Session」のイベントを記事化してご紹介させて頂きました。住宅と建材について考える森田アルミ工業のイベント「Session」。次回の開催もお楽しみに!
前編はこちらから→
中編はこちらから→
三交不動産株式会社 https://re.sanco.co.jp/
住友不動産ハウジング https://sumifu-housing.co.jp/
レクト一級建築士事務所 https://www.rect-a.com/
