Session Nagoya「上質な家づくりに共通する視点」(中編)
イベントレポートの中編では、登壇者のみなさんに設計で心掛けていることや苦労していることについて伺います。
設計を行う上で心がけていることは?
〈藤本〉では次の質問にいきたいと思います。

皆さんは普段から上質な家づくりをされていますが、設計を行う上で、常に心がけていることや大切にしていることについて聞いていきたいと思います。

まず三交不動産の吉野さんの回答が「外的要因を踏まえた設計と間取りのバランスを検討すること」ですが、外的要因とはどんなことですか?

〈吉野さん〉まず敷地がいつも違いますので、高低差があったり、どんな景色が見えるかというのは必ず考える要因です。その上でも、やっぱりLDKが一番人がいるところだと思うので、LDKを中心に間取りを考えるようにしています。
〈藤本〉外観や外構についてはどうでしょうか?
〈吉野さん〉緑が入るだけで映えるので、シンボルツリーは好きですね。それがどこに植わっているといいかをよく考えていて、打ち合わせで「ここに木があるといいですね」と提案するのですが、外構まで請けることが少ないものですから、最終的に植わっていないと少し残念な気持ちになりますね(笑)。
〈藤本〉あと「間取りのバランス」についても詳しく教えて頂けますか?
〈吉野さん〉「あまり廊下は要らないかな」と思っています。どんどんコスト高になっていて、面積を減らしていかないと資金計画が成り立たないので、その中で廊下や個室はなるべく小さくしながら、一番いる時間が長いLDKを充実させたいと思っています。

〈藤本〉ありがとうございます。次はレクトの廣戸さん。「条件を整え、満足を生むこと。違和感を消すこと」と回答を頂いていますが、「条件」とはどんなことを意味していますか?
〈廣戸さん〉周辺環境の条件であったり、法的な条件だったり、構造だったり、お施主さんの要望だったりします。それらの中で私が特に意識しているのは、例えばお施主さんから「ファミリークローゼットが欲しい」という要望があった場合に「本当に欲しいですか?」と聞くことです。

最近「SNSで見たからなんとなく欲しい」という方もいらっしゃるので、本当に生活の動線とかをイメージして言われてるのか、そうでないのか、要望の解像度を上げていくようにしています。
結果として「やっぱり要らない」っていうこともあり、そうするとその分他のところの面積を取れて、住んでからの違和感を消すことにつながるのかなと思っています。なので「本当にその個室に6畳も要ります?」とか、わりと聞きますね。
〈川治〉そこは住友不動産ハウジングの殿最さんの「ヒアリングを大事にする」っていう回答と似ているのかな?と思ったんですけど、殿最さんいかがでしょうか?
〈殿最さん〉そうですね。漠然と「6畳の部屋が欲しい」とか「10畳の部屋が欲しい」という人もいらっしゃるんですけど、その場合は「何を置きますか?」と細かく聞きます。
例えば寝室に「シングルやセミダブルのベッドを合計2つ置きます。テレビは置きません。化粧は他の場所でします」という場合、寝るためだけの部屋に8畳も10畳も割きたくないというのがあります。
なので、何を置くかで部屋の大きさを提案するようにしています。

〈藤本〉ありがとうございます。登壇しているみなさんの方で、隣の方に聞いてみたいことはありますか?
〈吉野さん〉はい、廣戸さんにお聞きしたいのですが、「違和感を消すこと」の「違和感」というのはどんなことですか?
〈廣戸さん〉例えば「やっぱりファミクロ要らなかったな…」という違和感を住んでから持たれないようにしたいので、SNSの情報などに捉われず、実際のその人の生活スタイルに合わせたものを実現できるといいなと思っています。
〈吉野さん〉どう聞いていくとその誤解が解けそうですか?深掘っていくと解けますか?
〈廣戸さん〉そうですね。質問をしながら解像度を上げていく感じです。

上質な家づくりを実現する上で、苦労していることは?
〈藤本〉ありがとうございます。では次の質問に行きたいと思います。

上質な家づくりを実現する上で、特に「苦労していること」や難しさを感じる点は何でしょうか?

レクト一級建築士事務所の廣戸さんの回答は「価値を共有すること」ですが、詳しくご説明をお願いできますでしょうか?
〈廣戸さん〉住むのはやっぱりお施主さんであり、私はその方の生活を見ているわけではないので、暮らしのイメージを深く共有するのは難しいと感じています。
その中で、イメージとの乖離が少なくなるような説明や分かりやすいパースの作成を心掛けています。
〈藤本〉ちなみにこれまで集合住宅に住んでいた方の場合、戸建て住宅の間取りや動線はイメージが難しかったりするのでしょうか?
〈廣戸さん〉それはあると思います。その場合は、過去の事例で似たような住宅があればその写真をお見せしてどのような空間になるかのイメージを共有するようにしています。
〈藤本〉吉野さんは「お施主様との完成イメージの共有」を挙げていますが、廣戸さんと似た課題でしょうか。
〈吉野さん〉はい、分譲住宅の場合は既にあるものを見て頂けるので分かりやすいですが、注文住宅はないものをつくっていくので、完成イメージを伝えるのは難しいですね。
僕らはどういうふうになるか分かっていますが、お客様が同じように感じているかどうかは人によって違います。後から「こんなふうになるとは思っていなかった」とならないように、しっかり共有できているかどうかを確認する作業が必要です。そして、そこが難しいところだと感じています。

〈藤本〉お施主さんから「思ったのと違う」と言われたことはありますか?
〈吉野さん〉「もっと大きいと思っていた」「もっと小さいと思っていた」とかはありますし、いい意味で「もっと暗くなると思ってたけど、想像以上に明るい家になって良かった」とか「思ったよりも狭いけど、この狭さが落ち着く」といった感想もあります。
ただ昔と比べてパースがきれいにつくれるようになったので、イメージの共有はやりやすくなっています。そのうち3Dプリンタで模型をつくれるようになったり、イメージの共有はさらにやりやすくなるのだと思います。
〈藤本〉ありがとうございます。殿最さんはシンプルに「SNSの影響」と挙げています。詳しく教えて頂けますか?
〈殿最さん〉お客様がSNSで見つけた写真と同じような空間を希望されることがあります。しかし、幅木や廻り縁一つとっても弊社はルールが厳しいので、お客様の要望を叶えるためにどのようなやり方ができるかをよく調べて提案をします。
弊社は長く住んでいく中でどんなリスクがあるかを想定するので、それをカバーできる方法を考えるのは苦労するところです。

〈川治〉だからこそ、御社で使える商品を組み合わせて代替案を考えるスキルが身に付いていくのでしょうか?
〈殿最さん〉そうですね。そのような提案力が必要ですし、そのために建材に関する幅広い知識を身に付けることは欠かせません。そのための勉強をしないでこの業界で生き残っていくのは難しいと感じています。
〈藤本〉ところで住宅の建築現場に行くと、大工さんが「設計者から無茶を言われるんだ」という声を聞くことがあります。廣戸さん、このあたりどうでしょうか?

〈廣戸さん〉それは、まあまあありますね。設計の人間としては、お客さんから見せて頂いたSNSの画像と同じものではなく、お客さんの好みから外れない範囲でちょっと違うものを提案したくなるんです。
そうすると結果的にお客さんにとってのオンリーワンのものができてご満足頂けます。ただ、初めてのことに挑戦する場合は現場の大工さんにはご苦労をお掛けしてしまいます。だから施工会社さんとしっかりコミュニケーションを取っていくことが重要になります。
〈藤本〉ありがとうございます。吉野さんはどうでしょうか?
〈吉野さん〉自分は現場監理もやっていて大工さんとも話をするんですが、納まりをイメージして「こう考えて、こう納めてほしい」と相談すると、仮にそれができなくても代替案を頂いて解決することが多いです。逆に、自分で納まりが想像できないものを「つくってほしい」とは言えないですね。
納まりが難しい場合はやはり大工さんから「難しい」「大変」という声を聞きますが、終わった後には満足そうにされていることも多いです。
イベントレポートの中編はここまでです。次回の後編では、登壇者のみなさんに追加予算の使い方や社内での教育について伺います。
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