暮らしの中の建築パーツ「店舗型賃貸住宅meedo」(後編)
今回の『暮らしの中の建築パーツ』では、小田急バスがオーナーとなりブルースタジオが設計したmeedo。後編では賃貸の住居内部を見ていきます。
前編はこちら→

ありそうでなかった、店舗兼住宅の賃貸
この物件には住人がお店をできるあきない・なりわいタイプと、仕事スペースや趣味を楽しめるアトリエ・住居専用タイプがあり、いずれも玄関先に土間が設けられているのが特徴です。
−この物件に限らず、ブルースタジオさんは店舗兼用住宅のことを「なりわい住宅」と呼んでいますよね。なりわい住宅ってどんなイメージですか?
「モデルはいわゆる昔の商店街の八百屋さんのようなスタイルです。奥に畳敷きの居間があって、そこで子どもが勉強しているような。だから暮らしと商売が近いコミュニティになるような建築をイメージしています。
在宅勤務も増えて家にいる時間が長くなり、このスタイルはちょうどいいのかなと思っているんです。趣味でつくったものをネットで販売してるような方だったら、実際の店舗で販売してみたいと思うじゃないですか。ちゃんと店舗借りるとなるとハードルが高いけれど、玄関先の小さなスペースならできるのかなと」

−自宅の一部を店舗にしている方もいますが、そういった方は持ち家ですしね。
「そうなんです。管理側からすると賃貸で店舗兼用の物件は決して楽ではないので、できる物件は少ないのではと思います。それに、こんなに広い賃貸の敷地を地域に開かれた場所にしていいというオーナーさんもあまりいないと思うんです。」
あえて人との距離が近い暮らしを選ぶ

セカンドハウスとして借りているHさんは、7月に入居しました。1階の玄関はガラス貼り、土間とキッチン、リビングがあり、2階はベッドルームなどに使える部屋や水廻りがあるというプランです。
「僕は家具とデザインの会社を経営しています。自宅で仕事をしていることが多いので、ここは友達とご飯を食べたりする際にも利用しています。ずっとこの深大寺のあたりに住みたかったんですよ」

hoccoの知見を生かした10㎡の土間設計
次は店舗が営業できる居室を見ていきましょう。ここも2階建てで、1階の玄関先が土間になっています。前編に引き続き、設計を担当したブルースタジオの薬師寺さんが語ります。
〈プロフィール〉
株式会社ブルースタジオ一級建築士事務所・薬師寺将。大分県出身。2007年よりブルースタジオ入社。団地再生リノベーション、障害者シェアハウス、木造オフィスビル、新築賃貸住宅など、事業系を中心とした建築設計を担当。
−アトリエやお店として使うことを想定している土間スペースのサイズは基準があるのでしょうか?

「hoccoの時は、1部屋10㎡以下に設定していて、それがちょうどいい大きさだなと思っていました。ここでも、そのサイズを基準に、間口に合わせて奥行きを決めました。店舗でなくても、趣味の場所としても使えるサイズ感として考えていますね」
住み手の愛着を育む無垢の床材
−居住スペースの床は無垢材を使っていますよね。ブルースタジオさんは賃貸の管理もされていますが、退去後に傷がついたりというトラブルはないですか?

「他の物件でも同じように無垢材を使っていますが、ないですね。長く使っている物件はたまにメンテナンスしてくださいね、とお伝えすることはありますが、みなさん傷も味わいになるとポジティブに考えてくれています。

この床材はオーク材で、UV塗装仕上げです。この近くにある建材メーカーのティンバークルーさんの製品です。床は空間の中の面積として大きいので印象を左右しますし、なるべく天然素材のものを選ぶように心がけています」
シンプルに仕上げたラワン材の造作キッチン

−キッチンは田中工藝さんで製作しているそうですね。
「はい。できるだけシンプルに、グリルも収納棚も少ないキッチンにしています。キッチン下のオープンスペースは自分好みでカスタマイズできる自由度の高い造りにしています」
−木材は床ともまた違った色味ですね。
「ラワンですね。ラワンはものによってムラがあるんですが、綺麗なものを仕入れてくれています。最近はこういった綺麗な赤ラワンが手に入りにくくなっているんですよ」
−サイズはほかの部屋も同じなんですか?
「実は部屋によってちょっとずつ違うんです。部屋の大きさもそれぞれ違いますから」

外観を邪魔しない、温かみのある木製サッシ

−店舗の入口のサッシは木製サッシで温かみがありますね。
「UNIWOODの木製サッシ ヘーベシーベというものです。以前からよく使っていて、hoccoでも採用しています。別荘などで多く使用されているみたいですね。
なるべく延焼ライン(延焼のおそれのある部分)に入らないように、このサッシを使う想定で配置計画のときから考えています。
これはデザインがいいだけでなく、性能も十分で、アルミサッシに比べて断熱性・気密性が高く、天然の木材を使用しており環境にもやさしい製品です。

オーナーも、借り手も、地域住民も使いやすい建築
最後に、meedoやhoccoなど地域に開かれた賃貸物件を担当されている薬師寺さんに、設計で大切にしていることを伺いました。

−限られた予算のなかで設計されていると思いますが、ディテールや設計全体へのこだわりはありますか?
「できるだけシンプルにつくることですね。賃貸なので、どんな人が使っても使いやすく、借りたいと思ってもらえるものにすること。さらにオーナーさんの目線にもなって、メンテナンスがしやすいかどうかも考える必要があります。
賃貸だとパーツにもあまりコストをかけられないのですが、素材はできるだけ本物を使うようにしています。例えば無垢の床材もそのひとつですね」

−さまざまなパーツを選択する必要があるなかで、できるだけシンプルに仕上げるというのはハードルが高そうですね。
「シンプルなものがなく造作することもありますが、コストも上がってしまいますし、なにより賃貸では収益を考えなくてはならないので費用を抑えるために既製品を使うこともよくあります。だから森田アルミ工業さんのBAKOやアルミの床見切りを見つけた時は嬉しかったですね。
−最後に「なりわい住宅」への想いを聞かせください。
なりわい暮らしの主役は「人」です。その人が集まり、自分らしく暮らしと仕事が共存できる生活が今後の社会に必要な要素だと感じています。その自分らしさの表現がその地域やその物件毎に物語を育んでくれるきっかけとなる「なりわい賃貸住宅」が増えていくといいですね。

さまざまな人が集い、地域に愛されるmeedo。ひとつひとつのパーツを丁寧に選ぶことで、シンプルな建築へと仕上がりました。meedoは、建築がある意味パーツの集積とも言えることを再認識させてくれる施設なのです。
【このコラムで紹介した建築パーツ】
・外壁仕上げ:ウッドロングエコ(小川耕太郎∞百合子社)
・路面素材:SKソイル(創景)
・深岩石
・電気メーターカバー:BAKO(森田アルミ工業)
・暖簾フック:暖簾掛金物(小澤金物店)
・キッチン:造作キッチン(田中工藝)
・入り口ドア:木製サッシ ヘーベシーベ(UNIWOOD)
【DATA】
なりわい賃貸住宅 meedo(みいど)
東京都調布市
延床面積 A棟299.24㎡ / B棟498.92㎡
構造 ⽊造2階建
竣工年月 2025年春
設計 株式会社ブルースタジオ
施工 ジェクト株式会社
