暮らしの中の建築パーツ「耐久性と実用性を重視した、自然素材あふれる28坪の家」(前編)
『暮らしの中の建築パーツ』では、新築やリノベーションをしたご家族の家を訪ね、それぞれの建築パーツを選んだ理由や感想をご紹介します。
第8回目は住宅設計エスネルデザインの村松悠一さんが設計を行った、新潟県柏崎市に立つ村松さんの自邸。
村松さんが提案しているのは「家計への負担を抑えながら、快適な暮らしを送れる住まい」。住まいをコンパクトに、そして凹凸を最小限にすることで、イニシャルコストやメンテナンスコストを抑えるという考え方がベースにあります。
さらにランニングコストとなる光熱費を抑え、快適性も高められるように、断熱性能を徹底的に高めているのも特徴です。
そんな村松さんの自邸は延床面積約28坪。総二階にポーチ部分の下屋が付いた住まいで、UA値0.22という非常に高い断熱性能が備えられています。
また、特に耐久性や実用性を重視している点も村松さんの家づくりの特徴です。
そんな村松さんが手掛けた自邸ではどのような建築パーツ選びがなされているのか、見ていきましょう。

地元で昔から使われてきた、流行り廃りのない杉板外壁
2025年2月に完成した村松さんの自邸が立つのは、里山と田園に囲まれた高台の住宅地。敷地内には背の高い広葉樹がいくつも生えており、春には美しい新緑に包まれます。まずは外壁に注目してみましょう。

―木の外壁が周囲の自然豊かな風景に調和しています。これは何の木が使われていますか?
〈村松さん〉国産の杉材を無塗装で使っています。ここ柏崎は日本海に面した街で、海沿いに行けば杉板張りの家が多く見られます。杉板はだんだんと表面がシルバーグレーに経年変化していきますが、中身は頑丈で塩害にも強いという特徴があるんです。昔は近くの山の木を伐って使っていたのだと思います。
住宅設計エスネルデザイン・村松悠一さん。新潟県柏崎市出身・在住の一級建築士。2018年に一級建築士事務所「住宅設計エスネルデザイン」設立。「超高断熱の小さな木の家」を提唱している。床下の天井高を約1.4m確保する高基礎が特徴の一つ。
僕は20代の頃に世界一周旅行をしながら建築を見て回っていたのですが、その土地ならではの素材を使った建物に魅力を感じていました。そこには合理的な理由がありますし、流行り廃りもありません。
シルバーグレーに変わっていくのが嫌でなければ、杉板は長期的に見てメンテナンスコストがかからない素材です。
―杉板の外壁は地域性があり、この土地の風景になじみますよね。下見板張りにしている理由はありますか?
〈村松さん〉張り方は好みでいいと思っていて、僕も縦張りにして押し縁を付けるのがいいなと思っていた時期がありましたが、今は下見板張りで段々が付いて影ができる感じが好きですね。

それぞれ一長一短ありますが、下見板張りは水切れがいいですし、マニアックなことを言うと、胴縁(外壁材を取り付けるための細長い下地材)が縦向きになるので、壁の中の通気という観点でも気持ちいいなと思います。
―次にポーチの方を見てみましょう。縦のルーバーが付いているのが特徴的ですね。
〈村松さん〉ポーチの目隠しのために取り付けたルーバーです。ポーチ部分をテラスのように使っていますが、外からの視線が遮られるのでとてもリラックスして過ごせます。

外壁と同じ杉材で、見付け30mm・奥行40mmの一般的に流通している材を30mm間隔で取り付けています。

軽やかな白い屋根に似合うシンプルな箱型雨樋い
―では次に軒に行きましょう。雨樋いが目立たず、軒先がすっきりして見えます。
〈村松さん〉外壁が杉板で建物の平面がシンプルな四角だと凡庸な雰囲気になりやすいというのがあり、屋根を薄くして少しキリっとした外観にしたいという思いがありました。

そうして薄くした屋根に合わせて、雨樋いは「HACO」(タニタハウジングウェア)という製品を使っています。四角い形なので屋根と一体に見えますし、雨樋を吊る金具が上についているので、下から見上げると金具の存在がほとんど分かりません。

価格は一般的な樹脂製のものよりも高いですが、ガルバリウム製ということで耐久性も期待できます。
軒天は屋根と一体に見えるようにケイカル板を白く塗装しています。細かいこだわりとしては、有孔ボードを使わずに通気をなるべく多く取りたいと思い、軒裏換気材「イーヴスベンツ」(日本住環境)を全周に取り付けるというちょっと特殊な設計をしました。

広い軒下ポーチのデッキ材には頑丈なイタウバを使用
―一通り外観を見せて頂いたので、次にポーチに上がってみましょう。ここはポーチというか、椅子が置いてあって眺めのいいテラスになっていますね。足元のデッキ材がとても頑丈そうです。

〈村松さん〉デッキ材はハードウッドと呼ばれるもので、その中でも「イタウバ」という樹種を使っています。さらに耐久性が高い樹種では「ウリン」がありますが、屋根が架かっていて雨がかりが少ないということからイタウバにしました。ちなみにイタウバでも屋外でメンテナンスせずに20年以上持つといわれています。

あと、ウッドデッキを普段から使う場所にするには、屋根を架けたり視線をカットしたりという工夫が必要になると思っています。実際に僕はオールシーズンここで過ごすことが多く、よく夕方に夕日を眺めながらコーヒーを飲んでいます。

ちなみにウッドデッキをここに設けたのは、玄関ポーチというマストで必要なものをちょっと拡張してつくれるので、コスト的にそれ程大きくならないという理由があります。
―屋根やルーバー、頑丈なデッキなどによって快適な屋外空間が実現できているんですね。手すりなどもこだわったところでしょうか?
〈村松さん〉以前は10cm角の杉の角材でつくっていたのですが、より視界を遮らないものにしたいと思い、ここではアイアンの支柱とイタウバの笠木を使って薄く仕上げました。

アイアンは溶融亜鉛めっき仕上げです。一番シンプルで錆びにくい仕上げということでこれにしました。素朴な杉板外壁とも合っているのかなと思います。
高い断熱性能を持つ木製玄関ドアはかわいい窓付き
―居心地のいいウッドデッキですが、ここはそもそもポーチでしたね。木がふんだんに使われた空間に、木製の玄関ドアがよく似合っています。

〈村松さん〉玄関ドアは断熱性能が高いものを使いたいということと、外壁に合ったドアにしたいということから木製玄関ドアの「ユーロトレンドG」(プレイリーホームズ)を選びました。他の木製ドアと比較してリーズナブルである点も魅力です。
ユーロトレンドGには窓ありと窓なしがありますが、玄関内部を明るい空間にしたくて窓ありを選びました。ただ、ちょうど顔の高さに窓があるので、人が立っている気配が気になる方には向かないと思います。あとは、将来木部の塗り直しをする際には、窓がある分、養生の手間が増えるというデメリットもありますね。
最近はスマートコントロールキーが組み込まれた玄関ドアが人気ですが、このような木製ドアでもスマートキーを後から付けられます。むしろ壊れた時の交換がラクという点では後付けの方が便利かもしれません。うちでは「セサミ」(CANDY HOUSE JAPAN)というスマートキーを使っています。

– 前編はここまでです。次回の中編では、村松様邸の内部をご紹介します。
【この記事で紹介した建築パーツ】
HACO(株式会社タニタハウジングウェア)
イーヴスベンツ(日本住環境株式会社)
ユーロトレンドG(プレイリーホームズ株式会社)
【DATA】
村松様邸
新潟県柏崎市
延床面積 92.39㎡(27.89坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2025年2月
設計 住宅設計エスネルデザイン
施工 有限会社大恭建興
住宅設計エスネルデザイン
https://escnel.com
