控えめだけど目を引く。情感あふれるオーストラリア生まれの塗料(中編)

株式会社NENGO・ポーターズペイントジャパンの山口さんと渡辺さんへのインタビュー。中編では、調色のこだわりやセルフペイントについて伺います。

 

「ヒューマンメイド」ティンターが調色し、一つ一つ確認したものを発送する。

――調色におけるこだわりや技術的なことを教えて頂けますか?

〈渡辺さん〉調色は “ティンター”というスタッフが行っています。基本的な調色は、ティンターが色ごとに定められたレシピを参照し、ベースと呼ばれる材料に顔料を入れて混ぜ、色を作り出します。

チェックの工程が重要で、でき上がった塗料は必ずチップと呼ばれる厚紙に塗り、完全に乾いた状態で確認をします。

つくったチップは顔料やテクスチャーの配合量を記したレシピと共に保管されますので、お客様が数年後に同じ塗料を注文された場合には、オリジナルのものでも再び同じ塗料をつくることができます。なので、廃盤という概念がないんです。 また、オリジナルはお客様に名前をつけてもらうこともできます。

顔料やテクスチャーの特徴をセオリーとして理解する必要があるのはもちろんですが、感覚で身に付けていくのもティンターにとって重要なことです。例えば石灰が入った塗料は、塗った時よりも乾いた時の方が明るくなりますので、オリジナルの塗料をつくる場合には、調色自体を少し濃いめにするといった感覚的な判断が求められます。

渡辺あづささん(PORTER'S PAINTS JAPAN カラーリスト)  アパレル業界に携わる中で『衣』から『住』にも興味をもつようになり2016年に株式会社NENGO入社。自宅や店舗の壁にペイントを希望する方のカラーコーディネートやペイントレクチャーの案内をメインに行う。

〈山口さん〉「今回は黄味が強かったからこの顔料を加えてみようか?」とか、補色を考えて調整をするのにも経験が大事です。

それから、鉱物などを原料とする顔料は高価なので、メーカーさんによっては顔料の割合を抑えたりもするそうですが、ポーターズペイントは逆に、こだわりの顔料をたくさん使うようにしています。また、オーストラリアの本社で色のレシピをつくっているスタッフに、美術系の学校の出身者が多いのも特徴ですね。

 

――ティンターの方には、セオリーと経験の両方が求められるのですね。自分たちのオリジナルの塗料の色見本がレシピと一緒に保管されるというのも施主としてはうれしいことですね。塗装した壁は経年変化していきますか?

〈山口さん〉素材として経年変化を楽しめるものが多くあります。例えば金属の錫(スズ)が入っている塗料の場合は触る程に艶が出てきますね。

山口円さん(PORTER'S PAINTS JAPAN ブランド統括マネージャー・カラーコンサルタント)  美容業界に携わったのち、ペイントのできる賃貸情報サイトを当時運営していた株式会社NENGOに2007年に入社。日本全国36か所の代理店とともに事業を展開。

〈渡辺さん〉錫以外の金属も酸化によって変化していきますので、酸をかけて錆びを出現させることもできます。本物の金属を使っているので、錆び風ではなく、本物の錆びを表現できるのも魅力です。

 

どんな塗装でもセルフメンテナンスが可能。

――色だけでなくテクスチャーが入っているからこその楽しみですね。メンテナンスはどのようにするといいですか?

〈山口さん〉 一般の方がセルフペイントで塗りやすいタイプの塗料がある反面、プロの技術が多く求められる仕上げが多いのも特徴です。セルフペイントを推奨している塗料は、一般の方でも部分的な塗り直しもしやすいです。

軽い汚れであれば、薄めた中性洗剤を付けたメラミンスポンジでたたくことで汚れを落とすことができますよ。ただ、ポーターズペイントの場合は汚れや傷がなじんでいくので、それほど気にならないように思います。15年程前にポーターズペイントで外壁を塗装させて頂いた建物が青山にあるのですが、塗装の劣化とツタの組み合わせでとてもいい味わいが出ています。

青山ライトボックススタジオ 

 

―― プロの技術が多く求められる仕上げにはどんなものがありますか?

〈山口さん〉2色重ねて濃淡をつけるタイプの塗料や、乾いた時にムラができやすい石灰入りの塗料、気温や湿度の影響を受けて錆が出る塗料などは経験や技術が求められます。塗装は奥が深く、多くの技術を求められるので、確かなクオリテイの提供をするためにも私たちは施工まで請け負い、必ず講習を受けたペインターが施工を行います。それを私たちは“責任施工”と呼んでいます。
石灰入り塗料(INTERNO LIMEWASH)の事例
錆びが出る塗料(LIQUID IRON+INSTANT RUST)の事例 

 

レクチャーを受けてセルフペイントに挑戦しよう。

――ポーターズペイントを施主が自分で施工する際には、事前に塗り方のレクチャーを行っていると聞きました。

〈山口さん〉ポーターズペイントは仕上げた時が商品として価値のあるものになるので、仕上げにご満足いただけないのはこちらとしても残念に思っていて、いい塗料をいい仕上げにしてお客様に届けるために、塗り方をレクチャーした上で販売する必要があると考えました。

この売り方は手間が掛かりますし、認知を広げるのにも時間が掛かります。それでも、大多数の人がビニルクロスを選ぶ日本においては、このやり方がいいのかなと思っています。

〈渡辺さん〉セルフペイントをするには必ずレクチャーを受ける必要があり、これは買う側にとっても面倒な仕組みです。でもそこに魅力を感じてくださる方も一定数いらっしゃって、「レクチャーで丁寧に教えてもらったおかげで、自分もきれいに塗れた」という口コミを頂いたりしています。

ここ溝口本店でのレクチャーの予約はホームページで受け付けていますし、各地の代理店でもレクチャーを行っていますので、セルフペイントに挑戦したい方はぜひお近くのお店に問い合わせて頂けたらと思います。

セルフペイントレクチャー風景 

 

――塗料をただ売るだけでなく、塗装という文化をとても丁寧に伝えていこうとしているのですね…!

〈渡辺さん〉日本にはまだまだ一般の人が塗装をする習慣が根付いていないので、丁寧に説明をしていく必要があると感じています。

〈山口さん〉そもそも「自分できれいに塗れるの?」という不安が最初の障壁になりますが、レクチャーで実践することで「意外と自分で塗れますね!」と自信を持てるようになる方が多いです。

オーストラリアでは一般の人がみんな自分で塗っていますし、決してセルフペイントは特別なことではありません。「家の壁を自分で仕上げた!」という達成感を味わえるのも魅力です。

 

- 中編はここまでです。次回の後編では、壁をビニルクロスから塗装に変更する方法やポーターズペイントジャパンの今後の展開についてご紹介します。

 

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