控えめだけど目を引く。情感あふれるオーストラリア生まれの塗料(後編)
株式会社NENGO・ポーターズペイントジャパンの山口さんと渡辺さんへのインタビュー。後編では壁をビニルクロスから塗装に変更する方法やポーターズペイントジャパンの今後の展開についてについて伺います。
塗装の壁はリフォームでも気軽に始められる。
――新築のタイミングではなく、既にビニルクロスが張られている部屋にポーターズペイントを塗りたい場合はどうするといいですか?
〈山口さん〉一度ビニルクロスを剥がし、塗装用のクロスを張って、その上にポーターズペイントを塗るというのが一番ベーシックなやり方です。ちなみに、塗装用のクロスは紙でできており、一度張ってしまえばもう張り替える必要がありません。その後は好きなタイミングで塗装の上から新しい塗料を塗り重ねることができます。
紙クロスを使わずに石膏ボードの上に直接塗ってもいいですが、建物の揺れやゆがみで塗装がひび割れを起こすことがありますので、それが気になる方は紙クロスを張るのがお薦めですね。
――つまり、塗装の壁はいつでも始められるのですね!ポーターズペイントを通して実現したいことを、改めて教えて頂けますでしょうか?
〈山口さん〉私たちは暮らしのシーンを彩ることを目標にしていますので、室内で心地よく過ごす幸せを少しでも多くの人に知って頂きたいなと思っています。
また、私たちNENGOは塗料だけを売っているのではなく、「100年後の街つくり」をしている会社なので、建築業界や一般の方々以外に、地域の建物を所有している不動産オーナーさんたちにもこの考え方を伝えていきたいですね。
株式会社NENGOが手掛ける築60年の団地再生プロジェクト(横浜市磯子区)でもポーターズペイントを使用。断熱や通気性、住まいの環境をリノベーションでアップデートしている。
ポーターズペイントは溝口本店のほか、日本全国に販売・施工代理店を設けている。塗装の相談や塗料の購入はお近くのお店まで。
お客様の満足が仕事のやりがいに。
――ポーターズペイントの仕事に携わることのやりがいや面白さはどんなことでしょうか?
〈渡辺さん〉私はNENGOに入社する前はアパレル業界で働いていて、元々接客が好きなのですが、引き渡し時に塗装が完了した部屋をお施主様が見て「わー!!」っと感動されている様子を見るととてもうれしい気持ちになります。
それから「壁もインテリアなんですね」とおっしゃるお客様がいらっしゃって、その言葉が印象に残っています。お客様の何気ない感想から大切なことを教えて頂くことが多く、それも楽しさややりがいになっています。
ポーターズペイントをスタッフの方々が天壁全面セルフペイントされた東京都青山にあるインテリアショップsource storeさんのショールーム風景。
〈山口さん〉あるお客様は「光の加減で壁の表情が変化するので、朝から晩まで1日眺めていても飽きない」とおっしゃっていて、その言葉がとてもうれしかったですね。
それから、最初に塗装の依頼に来られた時はまだお子さんが小さかったんですが、数年後に「子どもも一緒に塗れるようになったので、また来ました」と家族でいらっしゃる方もいます。お子さんが高校生くらいになって、自分の主張を持って親とやり取りをするようになっていたり、そのような家族の変化を見られるのもこの仕事の魅力ですね。
あと、自宅を塗装した方が、遊びにきたご友人にポーターズペイントのことをしっかりと説明されることも多く、「〇〇さんから教えてもらって来ました」と訪問される方がけっこういらっしゃいます。そうやって塗装の壁の魅力がお客様の紹介で広がっていくのもすごくうれしいことです。
来春、溝の口に新ショールームがオープン予定。
――ポーターズペイントの今後の展望を教えて頂けますでしょうか?
〈山口さん〉ポーターズペイントは体験することでその価値を深く理解できるもの。そのための新しいショールームを2024年5月オープン予定で準備を進めています。場所は当社が管理をしている元NTTのビルの2階で、東急田園都市線の高津駅と溝の口駅の間にあります。
Photo by Hiroki Kawata 川崎市高津区にあるリノベーション複合施設BOIL(ボイル)。株式会社NENGOにて企画・設計・施工・運営されているビルにポーターズペイントの 新ショールームがオープン予定。
ただ商材を見せるショールームではなく、ポーターズペイントの世界観に触れられる出合いの場にできたらと。まだ詳細は検討をしている最中ですが、絵を飾ったりイベントを開いたり、驚きや喜びを感じられる場所にしたいですね。もちろんペイントの体験も行います。
──では最後の質問になります。『Noizless』では「普通の家(しっくりくる家)とは何か」をテーマにしていますが、渡辺さんと山口さんにとってそれはどんな家でしょうか?
〈渡辺さん〉私は持ち家に住んでいるわけではないので、あまりイメージができないですが、「早く帰りたい!」と思える家でしょうか?
〈山口さん〉私は自分自身の感覚を大事にしたいので、感覚的に違和感がないものに包まれて暮らせる家ですね。美しさなどは特に大事にしたい感覚です。
左:山口円さん(PORTER'S PAINTS JAPAN ブランド統括マネージャー・カラーコンサルタント) 美容業界に携わったのち、ペイントのできる賃貸情報サイトを当時運営していた株式会社NENGOに2007年に入社。日本全国36か所の代理店とともに事業を展開。
右:渡辺あづささん(PORTER'S PAINTS JAPAN カラーリスト) アパレル業界に携わる中で『衣』から『住』にも興味をもつようになり2016年に株式会社NENGO入社。自宅や店舗の壁にペイントを希望する方のカラーコーディネートやペイントレクチャーの案内をメインに行う。
──前編・中編・後編の3回に渡ってご紹介させて頂いた株式会社NENGO・ポーターズペイントジャパンさんへのインタビュー記事は以上となります。
住宅の壁はビニルクロスで仕上げるもの。日本ではそんな固定観念がありますが、一歩国外へ出てみると、それが当たり前ではないことに気付かされます。
塗装であれば、自宅の壁を専門業者に頼むことなくメンテナンス可能ですし、気分転換に壁の色やテクスチャーを変えるのも思いのまま。
塗装を通して家を育てていく習慣ができますので、結果的に家そのものを長持ちさせることにつながりそうです。そして、それこそがポーターズペイントジャパンの母体であるNENGOの目指すこと。
とはいえ、急に家の全ての壁を塗装するのはちょっと勇気がいる。そんな方は、まずは寝室や子ども部屋などの1室から挑戦してみてはいかがでしょうか?