暮らしの中の建築パーツ「木製窓から田園風景を見渡す、別荘のような住まい」(前編)
『暮らしの中の建築パーツ』では、新築やリノベーションをしたご家族の家を訪ね、それぞれの建築パーツを選んだ理由や感想をご紹介します。
今回訪れたのは新潟県村上市の工務店、株式会社新和建設が設計施工を行った、村上市に立つ貝沼さん家族の住まいです。

貝沼さんは新和建設の設計部に所属するスタッフであり、自邸はご自身で設計を行いました。
新和建設は1989年に創業し、1991年に外張り断熱工法を用いた高気密高断熱住宅の建築をスタート。当時日本では珍しかったヨーロッパの木製サッシを採用するなど、早くから高気密高断熱住宅に取り組んできた歴史を持つ工務店です。
今回訪れた貝沼さんの自邸ではどのような建築パーツ選びがなされているのか、見ていきましょう。

近場で取れる豊かな食を楽しめる場所
2026年5月に完成した貝沼さんの自邸が立つのは、新潟県最北の街・村上市。伝統的な町屋が連なる市の中心部から車で15分程走ったところにある、三面川(みおもてがわ)中流域の台地に位置しています。

「ここは私の実家の隣なんですが、食と暮らしがリンクするような場所です。野菜を育てたり果実を採ったりして、それらを調理して食べる暮らしを私は子どもの頃に経験しながら育ちました。
お米は栽培を委託していますが、実家が所有する田んぼで採れたものを食べます。近くを流れる三面川では鮎が取れますし、近くにはハンターの方がいますので猪や熊の肉を頂くこともあります。
私の子どもたちは7歳と4歳なんですけど、感受性が豊かな幼いうちに同じような経験をさせてあげたいと思い、この場所に家を建てることにしました。
それに、設計者として自邸の建築で新しいことをやってみたいというのもありました。お客様の家で提案するのが難しい実験的なことも、自分の家であればできますので」(貝沼さん)。
株式会社新和建設 設計部 貝沼滉暉(こうき)さん。1996年生まれ。村上市出身・在住。二級建築士。新潟工科専門学校建築大工科卒業後、現場での大工経験を経たのち設計業務に従事。構造と意匠を両立させる木造架構を活かした設計を得意とする。
自邸の設計においては、見晴らしのいい北側や人工物がほとんどない東南側の抜けを確保することを重視。冬の積雪が1.0~1.5mにもなる多雪地域であることから、自然落雪式の大きな片流れ屋根にすることも要件にしたそうです。
また、断熱性能はUA値0.22と非常に高い仕様となっていますが、「断熱・気密・耐震性能を高めることは目標ではなく必要な前提と考えていて、その上で住まいをどのように豊かにできるか」を考えているのだそうです。
「ちょうど自邸の構想を練り始めた時に軽井沢に行く機会があり、そこで見た別荘に木製窓や板張りの外壁が使われていて、周囲の木々と調和していたんです。そのような建物も参考にしながら別荘のような雰囲気も持たせたいと思いました」(貝沼さん)。
では外観から見ていきましょう。

地元いわふね杉を使ったモダンなファサードラタン
―とてものどかな土地に伸びやかに佇む建物ですね。外壁材は何を使っていますか?
〈貝沼さん〉大部分はリシン吹き付けにしていますが、特にこだわったのは杉材を使ったファサードラタンです。

ファサードラタンは板材をすのこ状に張っていく工法で、ヨーロッパでよく使われています。一般的な外壁とは異なり空気がよく通るため、夏に壁の中の通気層に熱が籠りにくい点が特長です。
一般的な透湿防水シートでは耐久性が足りないため、高耐久のアスファルトルーフィングを使用しています。なので、すのこの奥には黒いアスファルトルーフィングが見えるんです。

これは一度やってみたかったんですが、せっかく木を使うなら地元産の木を使いたいと思い、地元岩船地域で採れる「いわふね杉」を使用しています。
全国的にそうですが、この地域でも地元の木材を使おうという動きが活発になってきています。その中でブランド化が進められているのが「いわふね杉」です。
いわふね杉はよく育っていて、比較的太い柱や梁材が取れますし、杉の中では高い強度を持っています。
ちなみにここでは特注の材料ではなく、天井の下地として組まれる野縁材(30mm×40mm)を使っていますので、コストを抑えられますし取り換えもしやすいです。汎用性のある部材でオリジナリティを出すのが好きで、こういう使い方をしています。

植栽を引き立てる鉄黒のSOLID
―野縁材を使ったファサードラタン。黒いルーフィング材とのコントラストも美しく、下地材とは思えない洗練されたデザインになっています。外壁はSOLID(ソリド)を使っている箇所もありますね。
〈貝沼さん〉はい、SOLIDのtypeM_LAPがすごく好きで、いろんな現場で使っています。自然素材で色のまばらさがあり、一つとして同じものがないところは木と同じだなあと感じています。経年変化が楽しめるのも特長ですね。ここでは「鉄黒」を使っています。

寝室の横に光庭があるんですけど、そこに植える植栽の背景として採用しました。黒い背景なので非常に緑がよく映えます。陰になっている時の感じも、日が当たった時の雰囲気もどちらもいいですね。
また、この壁は建物を正面から見た時に最も奥まった場所になるので、暗い色にしておくことで存在感が弱まり外観の全体的なバランスも整えられています。
いわふね杉の軒天とロングバーが付いた木製玄関ドア
―玄関ドアへと続くアプローチはしっかりと軒が架かっています。軒天の仕上げに使われている木も「いわふね杉」ですか?
〈貝沼さん〉はい、いわふね杉を製材して頂いたものですね。先ほどのファサードラタンと同様に、なるべく地元の木材を使いたいという思いで選んだ材料です。

長手方向に張ったことでとても伸びやかな印象になりました。節の有無などはこだわらず「ありのままの材料でいいですよ」という発注をしたのですが、とてもきれいな材料が届いたので気を使って頂いたのかもしれません。
それから、新和建設では木製玄関ドアを使うことが多く、今回は「ユーロトレンドG」(プレイリーホームズ)を選びました。パイン材の無塗装品を購入して、「キシラデコール」(アクゾノーベル)のチーク色で塗装をして仕上げています。
ハンドルはオプションのロングバーハンドルを選びました。実はこのようなハンドルを選べる木製ドアは珍しく、それもユーロトレンドGを選んだ理由の一つです。
木製玄関ドアは雨で濡れると劣化が早く進んでしまいますので、なるべく雨が当たらないように軒を深くしてドアを保護するような設計にしています。
広いウッドデッキには、耐久性とコストバランスが優れた豪州ヒノキを
―外部空間で使われている建築パーツ、最後にウッドデッキを見てみましょう。広々としたウッドデッキから眺める田園風景はタイ北部やバリ島のリゾートを彷彿させます。こちらのデッキ材は何でしょうか?
〈貝沼さん〉これは「サイプレス」(プレイリーホームズ)のウッドデッキです。プレイリーホームズさんの建材は昔から使っていますが、デッキ材は今いろいろな樹種を出されています。

サイプレスはオーストラリア産の針葉樹で「豪州ヒノキ」と呼ばれるものですね。うちのウッドデッキはかなり広い面積になるため、比較的安価で堅く耐久性がある樹種ということでサイプレスを選びました。
表面にリブ加工がされており、滑りにくいのも特長です。よくこのデッキの上でごはんを食べています。

– 前編はここまでです。次回の中編では、貝沼様邸の内部をご紹介します。
【この記事で紹介した建築パーツ】
SOLID typeM_LAP(ケイミュー株式会社)
ユーロトレンドG(プレイリーホームズ株式会社)
キシラデコール(アクゾノーベル)
サイプレス ウッドデッキ(プレイリーホームズ株式会社)
【DATA】
貝沼様邸
新潟県村上市
延床面積 120.21㎡(36.36坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2026年5月
設計・施工 株式会社新和建設
株式会社新和建設
https://www.shinwabb.com/
