暮らしの中の建築パーツ「豊かな自然に囲まれた、山小屋のような家」(後編)
今回の『暮らしの中の建築パーツ』は、新潟県阿賀野市に暮らす大越さん家族のお住まい(設計・施工:オーガニックスタジオ新潟株式会社)。後編では中編に引き続き内部を見ていきます。
スチール階段はラインを細くして主張のないデザインに
―次にリビングの中でひときわ目を引く階段を見てみましょう。こちらはオーダーメイドでつくったものですか?
〈大越さん〉はい、階段のフレームと手すりは鉄工所さんでつくってもらったものになります。踏板はタモの集成材を使っています。最初は木製の階段も検討していたのですが、強度が高い鋼製でいくことにしました。


オーガニックスタジオ新潟株式会社 建築部 大越志乃さん。1988年生まれ、阿賀野市出身。二級建築士。新発田南高校建築科、職業能力開発短期大学校住居環境科を卒業後、新潟市内の建築会社、建材メーカーでの勤務を経て、2021年にオーガニックスタジオ新潟に入社。現在は主にメンテナンスを担当している。
―「主張しないという」点では、スイッチからもそのような意図が感じられますね。
〈大越さん〉「NKシリーズ」(神保電器)は角があってパッと見た印象がきれいですよね。


ダイニングの上のペンダントライトは「PERA」(PERA)で、これはうちの設計の阿部さんからおさがりでもらったものです。
それから壁にはモーガルソケットの照明を付けています。ただ、これは直接光源が見えて私には眩しすぎるので、この先違う照明に変えるかもしれません。

造作キッチンは空間に溶け込む家具のような存在
―では次にこの家の主役とも言うべき造作キッチンを見ていきましょう。木の天板が空間になじんでいますが、これは何の木ですか?
〈大越さん〉天板はアメリカンブラックチェリーを使っていて、そこにシゲル工業のステンレスシンクを合わせています。オーガニックスタジオ新潟では造作キッチンを提案することがほとんどです。やはり造作であれば理想のキッチンをつくれますので。

キッチンの形は、シンク側に立った時に子どもたちの様子が見られるように、コンロとシンクを分けたセパレート型にしています。キッチンとダイニングテーブルをつなげたかったというのもセパレート型にした理由です。
また、キッチンとダイニングテーブルの天板の高さをそろえるためにキッチン側の床を少し下げています。

それから、シンクの下をゴミ箱スペースにしたり、その隣にミーレの食洗機を入れたり、端の余ったスペースには無印良品の収納ストッカーを入れたりしています。

後ろのカップボードは引き出しの収納にしていて、ツマミは「真鍮 天目形ツマミ」(上手工作所)を選びました。

天板に染みなどの汚れが増えてきましたが、サンダーをかけてオイルを塗って直すことができるので、そこは無垢材の良さかなと思います。
ただ、魚をさばく時に魚のにおいが天板に染み付きそうな不安があるので、料理が好きな方はステンレスを選んだ方がいいかもしれません。

窓はトリプルガラスが基本。杉でつくった造作窓も
―そろそろインタビューも終盤になります。オーガニックスタジオ新潟さんは断熱性能にも強いこだわりを持っていますが、窓はどんなものを使っていますか?
〈大越さん〉トリプルガラスが使われた樹脂窓「NS50」(エクセルシャノン)を使っています。従来の樹脂窓よりも枠が細くつくられているのが特長ですね。

あとは、1階の庭に面した開口部は杉の枠を使った造作のFIX窓が3つとスライドする窓が1つ並んでいます。造作の木製窓の良さは既製品感がないことですね。
枠の主張がないので外とのつながりがより感じられます。既製品の木製窓よりも安くつくることができますが、耐久性についてはこれから見ていきたいと思います。

窓周りの目隠しは、大きい窓のところは引き込み式の障子を使っていて、それ以外は断熱ブラインド 「ハニカムaSsu(アッス)」(PVソーラーハウス協会)を使っています。
ハニカムaSsuは窓周りの断熱効果もありますし、ひもでシュッと簡単に開け閉めできるのもいいですね。

温度変化によるストレスを感じないことがノイズレス
―たくさんの建築パーツや設計のご解説をありがとうございました。大越さんが建築パーツ選びで大事にしているのはどんなことでしょうか?
〈大越さん〉なるべく自然素材を使うこと。そして、なるべく偽物の素材を使わないようにすることですね。自然素材の中でも、真鍮など経年変化があるものに面白さを感じます。

―ありがとうございます。こだわってつくり上げた自邸に暮らしてみての感想を教えて頂けますか?
〈大越さん〉「不快なことがない」というのが一番強く感じていることです。贅沢なことだと思いますが、家の中にいて暑さ・寒さを感じないのが普通になっています。なので家を出た時に外の暑さや寒さに気づいて驚いたりします。

あとは、子どもが3人いるんですけど、室内からよく見える庭があるので気軽に安全に外で遊ばせられるようになりました。以前住んでいた賃貸住宅ではなかなかできなかったので、外とのつながりを感じてもらい、草花や虫に興味を持ってもらえるのがうれしいですね。

―では最後の質問になります。大越さんにとって「ノイズレス」とはどんなものでしょうか?
〈大越さん〉今この家に住んでいて不快感や違和感がないので、それがノイズレスな状態なのかなと感じています。先ほども話したように、家の中にいると温度変化によるストレスがありません。そして、自分が好きなものに囲まれていることや、家に対して不安がないこともノイズレスだと感じます。
快適な温熱環境が整えられた住まいで、草木が生い茂る豊かな庭を楽しみながら健やかな暮らしを送る大越さん家族。
家の内外に使われた建築パーツには自然素材がふんだんに使われており、長く住むほどに味わいが増し、愛着が深まっていくことが想像できました。
『暮らしの中の建築パーツ』では、今後もオーナー宅を訪ね、建築パーツ選びの背景や思いを掘り下げていきたいと思います。次回もお楽しみに…!
【この記事で紹介した建築パーツ】
Belt Simply(Atelier Key-men株式会社)
スウェーデンドア(ガデリウス株式会社)
スタンダード半丸(株式会社タニタハウジングウェア)
クサリトイ ensui(株式会社タニタハウジングウェア)
屋久島地杉(チャネルオリジナル株式会社)
ウッドロングエコ(有限会社 小川耕太郎∞百合子社)
グロスクリアオイル(株式会社Planet Japan)
ウッドコート(株式会社Planet Japan)
あづみのカラ松(プレイリーホームズ株式会社)
プラネットウォール・クイック&イージー フラット(株式会社Planet Japan)
エッグウォール(日本エムテクス株式会社)
KOBAU(株式会社Planet Japan)
SK106(TOTO株式会社)
ランドマーク LM4/B(聖和セラミックス株式会社)
nine 木製床ルーバー(nine)
NKシリーズ(神保電器株式会社)
PERA(株式会社PERA)
ステンレスシンク(株式会社シゲル工業)
真鍮 天目形ツマミ(有限会社上手工作所)
NS50(株式会社エクセルシャノン)
ハニカムaSsu(PVソーラーハウス協会)
【DATA】
大越様邸
新潟県阿賀野市
延床面積 101.84㎡(30.75坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2024年3月
設計・施工 オーガニックスタジオ新潟株式会社
オーガニックスタジオ新潟株式会社
https://www.organic-studio.jp/
