暮らしの中の建築パーツ「耐久性と実用性を重視した、自然素材あふれる28坪の家」(後編)
『暮らしの中の建築パーツ』第8回目、新潟県柏崎市に暮らす村松さん家族のお住まい(設計:住宅設計エスネルデザイン、施工:有限会社大恭建興)。後編では2階リビングを見ていきます。
落ち着いた雰囲気をつくり出すシナ合板とツガの羽目板
―いよいよここからメインとなる2階リビングを見ていきます。勾配天井になっていて、開口部も多く、個室中心の1階とのギャップでとても開放的に感じられます。壁の仕上げは1階と違って合板が中心ですね。

〈村松さん〉壁はシナ合板を張っています。木に囲まれた感じが落ち着きますし、白い壁よりも窓を切り抜く効果が強まります。

部分的にツガの羽目板にしている場所もありますが、それと比べるとシナ合板はコストを抑えることができますね。
デイベッドなどの壁にだけツガを張ることで特別感も生まれました。ツガは桧の床と同じように主張が弱く品があるのがいいなと思っていて、窓枠にも使っています。

住宅設計エスネルデザイン・村松悠一さん。新潟県柏崎市出身・在住の一級建築士。2018年に一級建築士事務所「住宅設計エスネルデザイン」設立。「超高断熱の小さな木の家」を提唱している。床下の天井高を約1.4m確保する高基礎が特徴の一つ。
窓は断熱・眺望・採光・日射熱の最適化を目指す
―窓を見てみると、サッシがほとんど目立たないですよね。
なるべく窓の存在を感じることなく景色が眺められたら最高だなあと思っていて、サッシ部分が隠れるように内側に窓枠を設けているんです。さらに、サッシの表面に厚さ4mm程度のツガを大工さんに張ってもらうことで、よりサッシを目立たなくしています。

窓はトリプルガラスが使われた樹脂窓「APW430」(YKKAP)で、窓枠を隠せるFIX窓を多用しています。FIX窓を使えば気密性能も高められますしね。
それから、ガラスの種類はなるべく景色がきれいに見えるように色が入っていないクリアを選びつつ、夏の日射熱を遮断できる「日射遮蔽型」と呼ばれるものを採用しています。
冬のエネルギー効率だけを考えると「日射取得型」が理に適っているのですが、オーバーヒートや夏の過ごしやすさなどを総合的に考えて、「色なし・日射遮蔽型」を選んでいます。

あとは、西側の窓は離れた位置から外を見るだけでなく、より窓に近づいて座りながら景色を眺められるようにしたいと思って出窓にしています。ここで窓を開けて外を眺めて過ごすと気持ちいいですよ。

出窓の奥行は45cmですが、60cmくらいあるともっとゆったり座れたかなあとも思います。
造作家具は主張しない素材を使いながら、機能と遊び心を盛り込む
―造作家具が多いのもこの2階リビングの特徴ですよね。
〈村松さん〉まず、窓が切り取られて見えるように、窓辺にカウンターを設けることにしたんですね。植物を置くのにも便利ですし。

テレビはカウンターの下に配置して、両サイドはオープンな棚にし、無印良品のワイヤーバスケットや収納ボックスが入るように設計しています。

他の造作家具と同様に主に松の集成材を使っていて、カウンターにはツガを選びました。ダイニング側の方は扉付きにしていて、壁と同じシナ合板にしています。取っ手は施工を手掛けた大恭建興さんが使っていたのを真似させてもらったもので「GLA-12」(スガツネ)という製品ですね。

―造作家具を大きくしたような、ソファの後ろの空間も魅力的です。
〈村松さん〉ソファの後ろのデイベッドは特に思い入れのある場所です。壁はツガの羽目板張りに、床はマットレスにしており、別荘のような感じで過ごせるようにしています。

今は主に子どもたちの遊び場になっていますが、僕もたまにコーヒーを持ってここに上がり景色を楽しんでいます。ソファの後ろに付けた背もたれのおかげで、散らかしていてもリビング側からほとんど見えないのも特徴です。

そして、その隣には階段上のスペースを利用した小さなロフトを設けています。収納用の空間ではありますが、ここも子どもたちの遊び場になっています。
ベーシックなアルミブラインドは抜け感のあるスラット幅50mm
―窓周りはブラインドを選ばれています。カーテンやロールスクリーンなどの選択肢がある中、ブラインドを選ばれた理由はなんでしょうか?
〈村松さん〉カーテンやロールスクリーンにはないブラインドの特徴として、スラットの角度を調整して視線や採光をコントロールできることがあります。日射を遮りながら景色を眺められるのはブラインドならではですよね。

これは「スペーシィタッチ TB-835」(トーソー)というアルミブラインドで、ベーシックなデザインがいいなと思って選びました。
ちなみにスラット幅は50mmと大きめのものにしています。スラットの隙間が広く、抜け感が得られやすいんですね。あと、スラット幅が大きい方がブラインドが持つ“オフィス感”が抑えられるように感じています。
この空間に合うように白を選んでいますが、多少の日射熱反射も期待しています。それと、細かいところですが自動降下機能(昇降コードを引くだけで自動でブラインドが降りてくる)もラクですね。
―ちなみにウッドブラインドもこの空間に似合いそうですが、アルミ製にした理由はありますか?
〈村松さん〉ウッドブラインドはスラットに厚みがあるので、閉じた状態の厚みが大きくなるんですね。市街地などで、主に降ろした状態で使う場合に適していると思っています。上げ下げをする際に少し重さを感じますしね。
この家では全開にすることが多いので、開けた時の薄さと軽さを優先してアルミ製にしました。コストをウッドより抑えられるのもメリットです。

メインの照明には施主が自分で交換できる電球タイプを採用
―次に照明を見ていきましょう。ダウンライトではなく、丸みのある照明が散りばめられているのが特徴的です。
〈村松さん〉照明についてはいろいろと思いがあるんですが、前提としてLEDが切れた時にプロを呼ばなければ交換できないものは避けたいというのがあります。面倒ですし費用も掛かってしまうので。あとは、照明器具自体があまり主張しないものがいいなと思っています。
そういった理由から、簡単に交換ができる電球を多く採用しました。それがあまり野暮ったく見えないように、なるべく2連で配置しています。

僕はボールランプも好きでいろいろなところに置いているんですが、電球はそれらとの相性もいいですね。

ダイニングのペンダントライトは「WATA-GUMO SMALL」(GREENHOLT)という照明で、こちらも控えめなデザインが気に入っています。

―2階リビングの奥にあるキッチンに行ってみましょう。この木製キッチンとカップボードは造作でしょうか?
〈村松さん〉これは造作キッチンではなく「スイージー」(ウッドワン)ですね。スイージーはキャビネットに天然木が使われているため造作キッチンのようにも見えますし、このような空間にマッチしやすいです。

造作キッチンの設計も経験がありますが、レールの品質などを総合的に見た時に、既製品キッチンの方がコストパフォーマンスが高いと感じています。造作でなければ実現することが難しいレイアウトでなければ、汎用性の高い既製品をお薦めしていますね。

あと、キッチンの外側の腰壁にはツガの羽目板を張り、リビング側から見た時に全体でまとまって見えるようにしています。

長期的な実用性とコストを重視した家づくりを提案
―様々なパーツや設計のご解説をありがとうございました。改めて村松さんが設計や建築パーツ選びで大事にしていることを教えて頂けますでしょうか?
〈村松さん〉住宅は長く住んでいくことを想定してつくるものですので、住宅そのものもパーツも長期的に見て面倒なことが起こりにくいとか、メンテナンスコストが掛かりにくいということを重視しています。
だから、かっこよくても掃除が大変そうだったり、壊れやすそうだったりという設計やパーツ選びは提案しないようにしていますね。
あと、パーツに関して言えば、単体で目立つものではなく、主張が弱くて使い勝手がいいものを選ぶことが多いです。そうすると、自ずと汎用的なものになります。

―ありがとうございます。では最後に村松さんにとっての「ノイズレス」とはどんなものかを教えて頂けますか?
〈村松さん〉僕にとっては光や景色が大事で、それらを素直に感じられる空間がノイズレスだと感じます。
例えば、窓周りがごちゃついていないとか、窓からの景色を眺めるための居場所があるとかですね。建物自体は素朴でいいなと思っています。

耐久性や快適性などの価値を見つめ、長期的なコストパフォーマンスを大切にしながら住宅の設計を行う村松悠一さん。その考え方に基づいて設計された自邸は、素朴で温かみあふれる素材がふんだんに使われていました。
杉板に覆われた村松邸は、これから5年、10年と時が経つにつれて、一層この土地の風景になじんでいくのでしょう。
『暮らしの中の建築パーツ』では、今後もオーナー宅を訪ね、建築パーツ選びの背景や思いを掘り下げていきたいと思います。次回もお楽しみに…!
【この記事で紹介した建築パーツ】
HACO(株式会社タニタハウジングウェア)
イーヴスベンツ(日本住環境株式会社)
ユーロトレンドG(プレイリーホームズ株式会社)
あづみの桧(プレイリーホームズ株式会社)
エコフレッシュクリーン(エスケー化研株式会社)
セミオーダー人工大理石一体洗面カウンターFlex Sinkハイバックタイプ(エクレアパーツ)
エーンヘート(イケア)
C形ブラケットL長平受 シルバー BR-212(株式会社シロクマ)
ソー・スタイル(Panasonic)
APW430(YKKAP)
GLA-12(スガツネ)
スペーシィタッチ TB-835(トーソー)
WATA-GUMO SMALL(GREENHOLT)
スイージー(ウッドワン)
【DATA】
村松様邸
新潟県柏崎市
延床面積 92.39㎡(27.89坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2025年2月
設計 住宅設計エスネルデザイン
施工 有限会社大恭建興
住宅設計エスネルデザイン
https://escnel.com
