不凍栓メーカーが生み出した、シンプルさを極めた蛇口一体型水栓柱(前編)
「作り手の気持ち」第7回目は、シンプルで美しい屋外水栓柱「アクアマール」を製造販売するメーカー、株式会社竹村製作所を訪ねました。
長野市に本社を構える竹村製作所は1954年の設立。水道の凍結を防ぐ不凍栓(水道の凍結を防止するために、水道管内の水を地中に排水する器具)で高い国内シェアを誇ります。

2009年頃にエクステリア市場に初めて進出し、現在では蛇口一体型デザイン水栓柱「アクアマール」シリーズ、蛇口一体型デザイン不凍水栓柱「アイスマール」シリーズといった、デザイン性の高い屋外水栓柱にも力を入れています。

今回のインタビューでは、Noizlessでセレクトした屋外水栓柱「アクアマール」の開発の経緯について、竹村製作所の田中さん、清水さん、井上さんに伺いました。前編・後編の2回に分けてご紹介します。
不凍栓の技術が評価され、エクステリア業界に進出。
―竹村製作所さんは不凍栓で高いシェアをお持ちです。エクステリア業界に進出した経緯を教えて頂けますか?
〈井上さん〉 創業時は何でも屋として様々な機械の修理を手掛けていたそうですが、ある時にお客様からの相談を受け、1つのハンドルを回すだけで水道の水抜きができる不凍バルブを発明しました。そこから不凍栓メーカーとして歩み始めたという歴史があります。
株式会社竹村製作所 経営企画部 部長 井上敏(いのうえさとし)さん。
〈田中さん〉 現在当社が販売しているTKバルブの構造は、当時創業者が描いた不凍バルブの絵そのままなんですね。
1949年に開発された竹村式不凍栓の仕組みを現した手描きの絵。(画像提供:株式会社竹村製作所)
この竹村式不凍栓が発明されると、水道の普及と共に地元長野だけでなく東北地方などの寒冷地へと当社の製品が広がっていきました。だから、この絵は竹村製作所の礎ともいえるものなんです。
株式会社竹村製作所 営業本部 市場開発担当課長 田中秀一(たなかしゅういち)さん。
2009年頃にエクステリア業界に参入したのは、コンクリート系の製品を扱っているエクステリアメーカーA社さんからの要請を受けて、「サナンド」という不凍水栓柱ユニットを開発したのがきっかけでした。
不凍水栓柱ユニット「サナンド」。(画像提供:株式会社竹村製作所)
外側のコンクリート部分をA社さんが製造し、当社は中の配管を手掛けました。
不凍栓メーカーとしてやってきた当社は、当時は特に「エクステリア業界に参入しよう」という気持ちでやっていたわけではなく、「エクステリア商材をつくっている」という感覚もありませんでした。受け身だったんですね。
展示会がきっかけで、エクステリア商材のサプライヤーに。
―受け身だったとのことですが、それがエクステリア業界参入のきっかけだったんですね。その後どのようにエクステリア製品を展開していったのですか?
〈田中さん〉 「サナンド」をつくった後に、A社さんからの提案でエクステリアの展示会に出展をすることになりました。
展示会が終わった後、会を主催していた商社さんに表敬訪問をしたところ、その商社さんも加盟しているエクステリアメーカーB社さんの事業にサプライヤーとして参加しないかと誘われたんです。
当時の私の上司が「なんでもやってみよう」というタイプの方で、迷いなく参入をすることにしました。
ただ、当時当社で製造していたエクステリア商材はサナンドと飾り蛇口だけ。B社さんのカタログにはわずかなスペースでの掲載でしたし、当時はそれ程製品が売れることは想像していなかったんです。

でも始まってみると思っていた以上にサナンドが売れていきました。
また、B社さんのサプライヤーとして入ったことで、商品の企画会議にも参加するようになり、そこで色々な商材を提案しました。
そうして次に採用になったのが厚さ50mmの板状のカバーに細いアルミ材のパイプを入れた「アクランド」という製品でした。薄いカバーに芯材のパイプを入れるという当社の技術力が使われた製品だったんです。でも残念ながらこれはあまり売れず、廃番になっています。
アクランド
(画像提供:株式会社竹村製作所)
〈清水さん〉 製品の設計者として私も会議に同行していました。B社さんの会議は主に名古屋で、いつも長野から車で片道3~4時間かけて行っていまして、帰りの車の中で田中と反省会をやっていましたね。
株式会社竹村製作所 イノベーション推進部 Engineering Expert 清水貞治(しみずさだはる)さん。
「アクランドはなぜ売れないんだろう?価格かなあ?機能かなあ?デザインかなあ?」と二人でディスカッションをしていると、長野に帰ってくる頃には改善案がまとまるので後日ブラッシュアップを掛けるんです。
でも、当時は社内でもエクステリア製品開発の認知度が低く、十分なリソースをかけられない状態。改善しても十分な結果は出ませんでした。
発想を転換し、中身のパイプの細さを生かすデザインに。
―新製品開発の難しさを感じさせるエピソードですね。そこから、どのようにして「アクアマール」の誕生に至ったのでしょうか?
〈田中さん〉 その後、会議の場でアクランドの中に入っているパイプを取り出して説明をしたことがあったんですね。すると、会議に参加していたアドバイザーの方が「これが欲しい!」と仰ったんです。
我々は細い内部構造を説明するために見せたんですが、そのデザインがいいというんです。我々としては外に出して見せるものではないので「えっ?」となりました。
カバー内部に隠されている細いパイプ。こちらは現行のアクアマールに使われているもの。
〈清水さん〉 その会議で「ステンレスの剥き出しの配管のようなものがいい」というアイデアを頂き、車の中でどうしようかと話し合いながら帰りました。アクランドが売れなかったので、次は失敗できないというプレッシャーもありましたね。
「ステンレス」という言葉が出てきたので、衛生的とか耐久性があるというステンレスが持つイメージを崩さないようにしながらデザインを考え、最終的にはシュッとした形のものができ上がったんです。
それが「ジラーレ」という製品です。その後同じ製品を当社でも販売をするようになり「アクアマール」という別の名称で売るようになったという経緯があります。

– 前編はここまでです。次回の後編では「アクアマール」の開発でこだわった部分を詳しく解説して頂きます。
