暮らしの中の建築パーツ「木・石・金属が融合する美しい住まい」(中編)

『暮らしの中の建築パーツ』第5回目、新潟市秋葉区に暮らすHさん家族のお住まい(設計施工:株式会社あかがわ建築設計室)。中編ではLDKの内装仕上げ材を見ていきます。

 

シンプルな白いビニルクロスがベース。アクセントには大谷石を

玄関ホールの引き戸を開けるとすぐに、階段部分を含めて22畳のLDKが広がっていました。白い壁と木がバランスよく配されたすっきりとした空間で、左手の大きな開口部からは自然光がたっぷりと注いでいます。

〈ご主人〉 壁は塗装にしたかったんですが、費用がなかなか高かったのでクロスにして、ポイントで大谷石を張って頂くことにしました。赤川さんの事務所で使われている大谷石の壁を見ていて、いいなあと思っていたので。

大谷石は他の壁とはやはり雰囲気が全然違いますよね。

〈赤川さん〉 壁紙はXB-152(リリカラ)を使っています。一般的な住宅用の量産クロスですね。施工性もいいですし、汚れも拭き取りやすいタイプなので、お手入れもしやすいです。

大谷石は表面1級コーピン フラット無地(山南石材店)というもので、質感がいい素材です。2級よりも1級の方がミソと呼ばれる茶色の斑点が小さいとされています。

 

 

上品で繊細な90mm幅のミズナラのフローリング

1階のLDK全体に使われている床は、節がないミズナラ(アンドウッド)。90mm×1,818mmの挽き板で、細めの床板が規則的に並ぶ様子が上品な空間によく似合っています。

〈ご主人〉 元々オークの床を考えていたんですけど、このミズナラを見せて頂いたら、すごくきれいでいいなあと思い選ばせて頂きました。

〈赤川さん〉 継ぎ目がある“ユニ”や長さが不規則な乱尺ではなく、一枚物なのですっきりとした印象になるのも特徴ですね。

〈奥様〉 子どもがダンスを習っているので、よくこの床の上で踊っています。幅が細めなのも良かったです。

 

 

機能的で質感もいい、コンポジションビニル床タイル

キッチンや洗面室、脱衣室などの床は、水や汚れに強いコンポジションビニル床タイルのピエスタLCT58-600(東リ)。自然由来の炭酸カルシウムを主成分としており、その素材感も魅力です。600mm角という大きめのサイズは、90mm幅のフローリングとのギャップでメリハリが感じられます。

〈ご主人〉 水回りはタイルで考えていて、その中でも質感や雰囲気が良さそうなものを探していたんです。

濡れても無垢フローリングのように染みにならないですし、よっぽど重いものを落とさない限り傷も付きません。色はグレーと決めていたので、特に迷いませんでした。

 

 

既製品の建具はシンプルさを重視。ここぞという場所は造作で

次に建具を見てみましょう。H邸で使われているシンプルな白い建具はスキスムT(永大産業)。

ダイニングテーブル横の収納扉にはラフィス(LIXIL)が使われています。

〈赤川さん〉 既製品の建具は基本的にスキスムを採用しています。1番の理由は価格です。他のメーカーの同様のドアと比較して1〜2割くらい安く手に入ります。当然、いいデザインのドアや造作のドアを採用したいと多くの人が思っていますが、コスト面やデザイン面でお客様に負担をかけないことが大事だと考えています。

2番目の採用理由は枠などの各寸法が小さめに抑えられていてスッキリすること。あと、色はホワイトを提案することが多いですが、スキスムのホワイトは青みや黄色味がなく、うちで使う壁紙のホワイトと一番馴染むことも採用の理由です。ハイドアや特注寸法なども安価で対応できるという特長もあります。

ラフィスはスキスムよりは少しコストアップとなりますが、スキスムでは補えない寸法やデザインがラフィスでは選べます。色もスキスムのホワイトと遜色がありません。今回はラフィスに真鍮細ハンドル(上手工作所)を取り付けています。

それから、玄関とリビングの間にある風除のドアは造作したものです。これまでに何軒かのお宅で同様のデザインの建具をつくっていて、小さいお子さんがいる場合は安全のために中桟の下は突板にしていました。今回はHさんのご希望でクリアにしています。素材はアクリルですね。框や桟はオーク材を使っています。

強度的に中桟が必要ですが、桟が映えるようにシンプルなデザインしています。

〈ご主人〉 以前から赤川さんの見学会で見ていて、いいなあと思っていた建具でしたので満足しています。

 

 

既製品のシステムキッチンをカスタマイズしてなじませる

LDK全体を見渡せるキッチンは、コーナーにアールが付いた腰壁でぐるりと囲まれています。

中にあるのはミッテ(TOTO)のキッチンとキャビネットですが、そのまま使用するのではなくカスタムを施しています。

〈赤川さん〉 まず、壁側のキャビネットですが、こちらはミッテの奥行45cmのものを5cm手前に出し、奥行50cmのオークの幅はぎ材の天板を取り付けています。そうすることで、既製品の寸法にはない奥行のキャビネットにしています。

それから、取っ手はミッテのパーツではなく、把手の金物(toolbox)にしています。この金物は長さをオーダーできるので、既製品のキッチンに合わせて使うことができるんですよ。

〈ご主人〉 システムキッチンで選べる取っ手の中から、なかなか気に入るものを見つけられなくて、赤川さんに相談をしてご提案頂いたパーツです。

あと、一般的なキッチンパネルのツヤっとした感じがあまり好きじゃなかったので、塗装のキッチンパネル(toolbox)にして空間になじむようにして頂きました。

 

 

リビングの掃き出し窓には、開放時も美しい障子を

リビングのメインの窓を見てみると、目隠しには2枚の障子が使われています。縦のラインが印象的なすっきりとしたデザインで、開放時は左手の壁に引き込める設計です。

〈ご主人〉 カーテンもいいなと思っていたんですが、ちょっと雰囲気を変えて障子にしてみたいと思い赤川さんに相談をしてみたところ、「いいと思いますよ」ということでしたので障子にしました。

〈赤川さん〉 床のミズナラはオークと比べると日本的な雰囲気があるため、障子は相性がいいと思いました。ただ、そこだけが和っぽくなり過ぎたり、逆にモダンになり過ぎたりしないようにデザインをしています。

〈ご主人〉 夜に家の中の光が外に漏れる雰囲気もいいですし、外から入ってきた光がやわらかくなる感じもいいですね。

 

 

– 中編はここまでです。次回の後編では、H邸の洗面台や照明をご紹介します。

【この記事で紹介した建築パーツ】

耐摩カラーSGL®日鉄鋼板株式会社
セラミソフトリシンエスケー化研株式会社
ユーロトレンドGプレイリーホームズ株式会社
B010LW防湿仕様タイガランプ合同会社
真鍮製インターホンカバーdij/株式会社トヨオカ
アルミ製フラットバー株式会社LIXILXB−152リリカラ株式会社
大谷石表面1級コーピン フラット無地有限会社山南石材店
ミズナラプライウッドフローリングアンドウッド株式会社
ピエスタLCT58-600東リ株式会社
スキスムT永大産業株式会社
ラフィス株式会社LIXIL
真鍮細ハンドル有限会社上手工作所
ミッテTOTO株式会社
把手の金物株式会社TOOLBOX
塗装のキッチンパネル株式会社TOOLBOX

 

【DATA】
H邸
新潟市秋葉区
延床面積 109.31㎡(33.00坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2022年12月
設計・施工 株式会社あかがわ建築設計室

株式会社あかがわ建築設計室
https://akagawa-scot.com/