暮らしの中の建築パーツ「木・石・金属が融合する美しい住まい」(前編)
『暮らしの中の建築パーツ』では、新築やリノベーションをしたご家族の家を訪ね、それぞれの建築パーツを選んだ理由や感想をご紹介します。
第5回目は新潟市中央区の工務店、株式会社あかがわ建築設計室が設計施工を行った、新潟市秋葉区に立つHさん家族の住まいです。
あかがわ建築設計室の代表・赤川仁一さんは、2016年に独立。その後2020年に法人化して現在に至ります。住宅の設計で大切にしているのは「本当に必要なものを選択していくこと」。余分な装飾を排すことで自然に現れる美しさが、赤川さんが手掛ける住宅に見られる特徴です。
今回訪れたH邸ではどのような建築パーツ選びがなされているのか、見ていきましょう。
外壁は金属×塗り壁×木でバランスを整える
以前は近くに立っているご主人の実家でご両親と同居していたというHさん家族。家族が増えて手狭になってきたことから、新築することを決めたそうです。
「赤川さんは僕が行ってる美容室の美容師さんに教えて頂いたんです。実際に建てられた家を見学会で見てみると、シンプルなデザインで、細部までこだわって設計をされていることに共感しました。細かい部分の対応なども柔軟にして頂けそうだと思ったこともお願いをしたいと思った理由です」(ご主人)。


〈ご主人〉 外観や外壁材は赤川さんに提案をして頂いたものです。見学会で見たお宅の淡い色味がいいなと思い、同じようにして頂きました。
〈赤川さん〉 いつも最初のプランを出す時にCGも見てもらうんですけど、その時に作成したイメージで進んでいきましたね。
株式会社あかがわ建築設計室 代表 赤川仁一さん。一級建築士、一級建築施工管理技士。1982年新潟市西蒲区生まれ。神奈川大学工学部建築学科を卒業後、新潟市内のいくつかの設計事務所を経て、2016年にあかがわ建築設計室を創業、2020年に法人化。時間をかけて考えることや作ること、時とともに変化していく素材選びを大事にしている。
正面の壁の窓があるところに木のルーバーを入れているんですが、これは“窓っぽさ”を消すために入れたものです。
あと、ガルバリウム鋼板は雨が当たらないところに使うと錆が出やすいので、軒が架かっているポーチやテラスの壁はセラミソフトリシン(エスケー化研)や杉材で仕上げています。外壁は場所によって素材を変えていますが、それによって雰囲気を壊すことがないように気を使っています。
〈奥様〉 外観や外壁はすごく素敵で気に入っています。
〈ご主人〉 ガルバリウム、リシン吹き付け、木のバランスがいいなと思いますし、グレーの明るさが白すぎずちょうどいいですね。
グレーの吹き付け×グレー塗装した木製ドアの組み合わせ
玄関ドアは、高い断熱性能を持つ木製ドア、ユーロトレンドG(プレイリーホームズ)。欧州赤松が使われたドアで、シンプルなデザインが特徴です。
〈ご主人〉 以前赤川さんが同じドアで塗装をしていないものを使っていて、いいなあと思っていたんですけど、「色を塗ってみるのはどうですか」というご提案を頂き、グレー塗装をして頂きました。外壁と色味がそろって良かったなと思います。
〈奥様〉 機能的な鍵が付いた玄関ドアも候補にありましたが、それよりも木のドアがいいなと思っていたのでとても満足しています。
〈赤川さん〉 ユーロトレンドGは、断熱性能だけでなく、気密性能や遮音性能も高いドアです。樹種も豊富ですし、ハンドルやガラス窓などのオプションも選べます。さらに、施工性も良く、価格も高すぎず、比較的手軽に取り入れられる木製ドアですね。
小さなパーツには真鍮を使ってアクセントに
玄関ドアの横には真鍮製のブラケットライトB010LW防湿仕様(タイガランプ)や、真鍮製のインターホンカバー(dij)が使われています。
〈ご主人〉 赤川さんはこれまでもポイントで真鍮を使っていたので、同じように照明やインターホンカバーにアクセントとして真鍮を使いたいなと思いました。かわいい感じもありますし、雰囲気も良いですね。照明は外で使える真鍮製のものがあまりなくて、探したらタイガランプさんに辿り着きました。
インターホンカバーもネットで探して見つけたのがこのdijさんのものでした。カバーの中には普通のインターホンが入っています。こちらは僕の方で購入して付けて頂きました。経年によって真鍮が変化していくのも面白いですね。
上がり框のゆるやかなカーブはアルミのフラットバー
ドアを開けて中に入ると、そこは奥行方向に長い4畳の玄関。奥の1畳分がシューズクロークになっており、リネンのレースカーテンで軽やかに目隠しされています。
この空間で特徴的なのが、カーブを描く上がり框。立ち上がり部分は特注色のグレーのアルミ製フラットバー(LIXIL)で保護されており、その先にフローリングがあります。
〈赤川さん〉 それほど広くない玄関の中で、家族4人が並んだり、靴を脱ぎ履きした時でも窮屈に感じないように、土間部分と床部分をどちらもゆったりと、そしてしっかりと確保したいと思いました。
そのために、上がり框は角ができる形状ではなく、R形状にして緩やかにつなぐようにしました。また、玄関に入った時の印象も、上品で優しく迎え入れるような雰囲気になったと思います。
– 前編はここまでです。次回の中編では、H邸の内装仕上げ材をご紹介します。
【この記事で紹介した建築パーツ】
耐摩カラーSGL®(日鉄鋼板株式会社)
セラミソフトリシン(エスケー化研株式会社)
ユーロトレンドG(プレイリーホームズ株式会社)
B010LW防湿仕様(タイガランプ合同会社)
真鍮製インターホンカバー(dij/株式会社トヨオカ)
アルミ製フラットバー(株式会社LIXIL)
【DATA】
H邸
新潟市秋葉区
延床面積 109.31㎡(33.00坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2022年12月
設計・施工 株式会社あかがわ建築設計室
株式会社あかがわ建築設計室
https://akagawa-scot.com/
