【暮らしの中の建築パーツ】生活感を排除したホテルライクなリビング(前編)

『暮らしの中の建築パーツ』では、新築やリノベーションをしたご家族の家を訪ね、それぞれの建築パーツを選んだ理由や感想をご紹介します。

第4回目は新潟市中央区の工務店、株式会社Ploot(プルート)が設計施工を行った、新潟市秋葉区に立つHさん家族の住まいです。

Plootの代表・齋藤祐司さんは、大学で建築デザインを学び、いくつかの設計事務所を経て、2017年に独立して株式会社Plootを設立しました。

「感覚的な価値の創造」をコンセプトに掲げており、普遍的で変わらないもの、その場にあるべきかたちを追求しています。

今回訪れたH邸ではどのような建築パーツ選びがなされているのか、見ていきましょう。

 

めっきの荒々しい質感を現した、ガルバリウム鋼板の外壁

アパート暮らしをしていたHさん夫婦は、落ち着ける暮らしをしたいと思い、新築計画をスタート。

「家っぽくない家を建てたいと思っていて、住宅雑誌でそういう住宅を建てているいくつかの会社さんを見つけ、訪ねました。Plootさんも雑誌で見つけて、掲載されていたお宅のシックな雰囲気に惹かれました。施工事例がどれも素敵でしたし、代表の齋藤さんのやわらかさや話しやすさにも魅力を感じましたね」と奥様。

95坪のゆったりとした土地に立つH邸は、ガルバリウム鋼板を使った耐摩カラーSGL®(日鉄鋼板)の壁で覆われており、工場や倉庫のような趣があります。
〈齋藤さん〉 Hさんご夫婦からシルバーやグレーの外壁にしたいと伺っていて、ガルバリウム鋼板の中でも、素地の表情が現れているものが素材感を感じられて良いのではないかなと思いお薦めをさせて頂きました。
株式会社Ploot 代表 齋藤祐司さん。1983年新潟市生まれ。長岡造形大学造形学部建築環境デザイン学科を卒業後、新潟市内のいくつかの設計事務所を経て、2017年に株式会社Plootを設立。ディテールの美しさにこだわった、独自性の高い住宅や店舗の設計施工を行っている。

〈奥様〉 ガルバリウム鋼板はメンテナンスせずに長く使えると聞いていましたし、齋藤さんにお薦めして頂いたものは無機質な感じも好みでした。

日が当たると光をよく反射して眩しくなるのが特徴ですね(笑)。家が完成して2年近く経ちますが、気になるような汚れもなく満足しています。

 

 

シルバーの外壁と調和するシンプルな玄関ドア

オーバーハングした2階部分の下がアプローチ兼ポーチになっており、雨に濡れずに行き来できる設計です。シルバーの玄関ドアが外壁になじんでいます。

〈齋藤さん〉 この玄関ドアはジエスタ2(LIXIL)です。僕たちは家のイメージに合わせて木製やアイアン製のドアを造作することもありますが、既製品を使う場合はジエスタ2をお薦めしています。デザインがシンプルで僕たちが提案する家との相性がよく、性能面もしっかりしているからです。

〈奥様〉 はじめは白・黒・シルバーで迷っていたんですが、家っぽさを隠したくて、「入口どこだろう?」と思うくらい目立たない玄関ドアにしたいと思い、このシンプルなシルバーのドアを選びました。

生活感を出したくなかったので窓がないタイプにしています。取っ手も一番目立たないタイプを選びました。

 

 

RCの代わりに考案された、セランガンバツの壁

ところで、ポーチの先には、奥のプライベートな庭を目隠しできるように木材が張られた高めの壁が立っています。

〈齋藤さん〉 フェンスではなく壁でしっかり目隠しをしたいというご要望を頂いていて、最初はRCの壁が候補に挙がっていたんです。ただ、RCにするとコストがかなり上がってしまうということで、木製でつくることにしました。

中の様子が完全に見えないようにしつつ、かつ内側から見ても外側から見ても壁がきれいに見えるように、ファサードラタンという仕上げ方にしています。

張っている木はセランガンバツというハードウッドで、「100年腐らない」といわれるほど耐候性が高い樹種ですね。内側にはファサードラタン用の透湿防水シートを張っていて、これで木の隙間を塞いで壁にしています。

〈奥様〉 夏は庭でバーベキューをしたり、プールを出して子どもを遊ばせたりしていますが、外からの視線を気にせずに過ごせます。「素敵な壁にして欲しい」とだけお願いして、お任せでつくって頂いたもので、とても気に入っています。

日中はリビングのバーチカルブラインドを開け放しておけますし、この壁のおかげでプライベートな空間を満喫できています。

 

 

工場を思わせる溶融亜鉛めっき仕上げの階段

玄関ドアを開けると、目の前に広がっていたのは、内装のほとんどがモノトーンで統一された空間でした。

玄関土間はモルタル金鏝(かなごて)仕上げで、その先にはモルタル調のフロアタイルで仕上げられた床が広がっています。

そして、右手には無機質なアイアン階段が2階へと伸びています。

〈齋藤さん〉 階段はアイアンのスケルトン階段にしていて、側桁(がわげた)と手すりは溶融亜鉛めっき仕上げにしています。耐候性を高められる溶融亜鉛めっきは、本来は外部空間で使われるものですが、外壁と同じように塗装をしないこの仕上げ方をご提案しました。

溶融亜鉛めっきならではの、そこにしか現れない模様もいいなと思います。手すりは丸パイプにしています。

〈奥様〉 階段は齋藤さんにお任せしてつくって頂いたものです。イメージの共有に工場の手すりの写真を出して頂いたことが印象に残っています。

どういう雰囲気になるのか少し不安もありましたが、でき上がってみたら素敵でした。

〈ご主人〉 床材と相まって住宅っぽくない雰囲気の空間ができ上がりましたね。アイアン階段でも見たことがない仕上げでした。

 

– 前編はここまでです。次回の中編では、H邸の内装仕上げ材をご紹介します。

【この記事で紹介した建築パーツ】

耐摩カラーSGL®日鉄鋼板株式会社
ジエスタ2株式会社LIXIL
セランガンバツ
アイアン階段(溶融亜鉛めっき仕上げ)

【DATA】
H邸
新潟市秋葉区
延床面積 87.58㎡(26.49坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2022年12月
設計・施工 株式会社Ploot

株式会社Ploot
https://ploot.jp/