床見切りの話

「床見切り」という部材をご存知でしょうか。

名前からどのような部材か想像できる方は多いと思いますが、具体的にどのような役割や種類があるかをご存知の方は少ないかと思います。

床見切りとは異なる素材の床を施工する際に生じる隙間や段差を解消する部材です。 例えばフローリングとクッションフロアの境に床見切りを設け隙間や段差を解消したり、フローリングの貼り方向を変える際にも床見切りを設ける事で空間を分ける役割を持っています。 

また、異なる素材が隣り合わせになる部分は端部が劣化しやすく、日常生活の中で歩行する際に端部を踏んでしまう事で床が欠損したり沈んでしまう事もありますので、床見切りはそのような問題を解決する為の機能的な部材といえるでしょう。

 

機能と意匠を兼ね備えるパーツ

近年の注文住宅では意匠性や耐水性を高める為にキッチンの床をタイル仕上にする事が多く、フローリングとタイルを区切るために床見切りを使用する住宅会社が増えております。空間や用途に応じて異なる素材を使いデザイン性を向上したいと考える施主様が多い為、床見切りは意匠性と機能性を兼ね備える為には必要不可欠な部材と言えるでしょう。

しかし、意匠性を高める為に異なる素材を選択したのにもかかわらず、床見切りの素材や形状を誤ると逆に意匠性を損なう原因となり、空間にノイズが生まれ、時に垢抜けない印象を与えかねない部材でもあります。

ではどのような床見切りを選択すればノイズレスな空間になるのでしょうか。 

 

素材・厚み・形状の違い

それは床見切りの「素材」と「厚み」をしっかりと検討することです。 床見切りの素材は大きく分けると「木製」「樹脂製」「ステンレス製」「真鍮製」の4種類あり、デザイン思考の高い施主様はスタイリッシュな「ステンレス製」や「真鍮製」の床見切りを好む方が多いです。

 しかし、ここでポイントになるのが床見切りの「厚み」です。床見切りは素材だけではなく「形状」にも種類があり「L型」「T型」「への字型」の3種類が一般的です。

その中で多くの住宅会社で使われているのが「T型」の床見切りです。「T型」は床を仕上げてから施工することが出来る為、住宅会社からすると施工性が良く手間のかからない仕上方法となります。しかしその反面、見切り材の見付幅(上から見える部分)に厚みがあり、見切り材の主張が強くなる為、機能性とデザイン性が両立しておらず、ノイズが発生するケースが多々見受けられます。

一般的なT型見切りの見付けは15mm程度、30mmなどの更に幅広のタイプも

 

シンプルで丁寧さを感じる見切り仕上げ

ここでオススメしたいのが「L型」の床見切りです。「L型」の床見切りは床を施工する際、事前に施行する必要がある為、住宅会社目線から見るとひと手間増える部材になりますが、見付幅が5mm前後の商品もあり、見付が薄いことで見切り材として主張する事なく、シンプルかつどこか丁寧さを感じる洗練されたノイズレスな住まいを実現することできます。

しかし「L型」の床見切りは薄さを求めるあまり施工難易度が高く、住宅会社の施工技術によっては切断面を揃えられず綺麗に見切ることが出来ません。また伸縮により隙間が発生する等の不具合が発生する可能性をある為、住宅会社の技術や経験によって仕上がりが左右されることもあるので、住宅会社の見極めが必要になります。

おうちLABOでの施工事例

 

近年は「T型」でも見付幅が薄いデザイン性と施工性を両立した見切り材も出てきているため、「素材」や「厚み」について住宅会社とよく相談されることをオススメします。 

画像はNoizless掲載製品「床見切りkeid

 

こだわったプロセスが愛着の湧く住まいへ

床見切りという決して家の主役とは言えない部材ですが、このひと手間を加え「当たり前」のデザインを変化させることで既視感のある住宅から脱却し、細部にまでこだわったというプロセスこそが「愛着が湧く住まい」になる秘訣で、豊かな暮らしに繋がるのかもしれません。