家を「ペット」に例えてみれば…
「家」はナニモノ?
新築で戸建てを建てるにしろ、中古マンションを買ってリノベーションするにしろ、人は自ら住む家を手に入れ、そこで暮らします。人にもよりますが、1つの家に対して、まぁまぁの年月の付き合いになることも多いと思います。だからこそ、自分なりに住みたい家とはなんだろうと考えるでしょうし、結果、このNoiselessにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
さて、家とは。何かしらの「物」であることは間違いないのですが、間取りといった形状や、仕様や設備といった機能だけで割り切って考えていくだけでは、なかなか、この『住みたい家』にはたどり着かない感覚があります。

家を「ペット」に例えてみませんか
私案であり試案ですが、家を一度「ペット」に例えてみるのは、いかがでしょうか。
皆さん、想像してみてください。
今お住まいのご自宅、どんなペットに例えられそうですか?
お気に入りの表情は?手がかかるところは?それぞれ、どんなところでしょう。
一緒にいて、ちょうどしっくりくる居心地の良さを想像する感覚に近いかもしれません。しつけがちゃんとしているといった飼いやすさの面と同様に、冒頭の間取りや機能性のような、不便のない暮らしやすさの観点も大事ですが、それだけでは語り切れない部分が、家をペットとして捉えてみることで、少し見えてくるのではないでしょうか。
うちの犬のドジなところ、うちの猫の変なクセ、そんなところに愛情を見いだすことができるなら、もしかしたら、自宅のちょっと使いづらい動線や工夫のいる収納スペースも、家への愛着の源泉にできるのではないかと思います。
ペットに完璧を求めるのがナンセンスなように、家にも理想を求めすぎないことが、結果、暮らしの満足度をグッと高めるコツかもしれません。

家を手放す時の気持ちの話
「家は一生住むもの」という考え方を、皆さんはあまり持ってはいらっしゃらないと思います。家族構成も勤務先も変化が起こり得る世の中で、頑なに固執すべき考えでもないでしょう。
一方、住宅の購入・売却を資産形成の一部と考える向きが、このところ増えてきました。例えば、夫婦が共働きのうちに、ペアローンをめいっぱい組んでタワーマンションを買う、といったパターンです。考え方として何が正解ということはないのですが、これはこれでちょっとドライ過ぎる寂しさを感じます。気持ちの問題だけでなく、その考え方で、建物の維持管理の意識を継続的にしっかり持てておけるのだろうか、また、周囲も同じような購入動機の人ばかりが住んでいるような建物や街は、はたして楽しいのだろうか、正直疑わしいところです。
特に、その家を手放すタイミング、つまり売却時に、単純に高く売れればそれで良いというスタンスには、かなり危うさを感じます。
ここでも家をペットとして考えることで、単なる不動産売買という手続きに変化が起きます。ちゃんとしつけをして、愛情たっぷりに育てあげ、次の飼い主(住まい手)に引き継いでいく行為として捉えなおすことができます。これだけでかなり丁寧な感覚を個々人が持てるきっかけになるのではないかと考えます。
売ってしまうから後のことは知りません、好きにして構わないという一人一人のスタンスは、その家に対しても、その家が建つ街に対しても、少しずつ愛情不足をもたらし、その常態化が、ひいては日本の家全体のクオリティ低下、街並みの乱れにもつながっていく側面は意外と大きいのではないかと考えます。

空き家は「孤独死待ち」
いきなり話が大きくなりましたが、勢いでもう少しだけ大きくさせてください。
家への愛情不足。その終着点が「空き家」問題です。空き家は、誰も住んでいないわけですから、ペットで言えば、飼い主不在、野良の孤独死待ち状態です。もちろん生き物ではないですから、感傷的に「かわいそう」といった感覚は過度かもしれませんが、ある意味、その家としての「生を全う」させる意識を、持ち主はいくらか備えておくべきではないかと考えます。
例えば、昔の思い出があるから壊すに壊せず放置するのではなく、どなたかリノベーションしてでも大切に使ってくれる方がいるなら引き継ごう、そういった感覚です。

新築の時こそ、意識のスコープを延ばそう
中古住宅に住む場合、多少なりとも、この引継ぎ行為を意識はするはずです。仮に大規模に手を入れるとしても、元の間取りなどから考える必要があり、そこに元の住まい方、暮らし方が垣間見えます。
一方、新築住宅の場合は、できることもより自由で、その分考えることが無限にあるような感覚になりやすく、計画段階では、将来的な住み替えのことやいつしか空き家になる可能性まで考えを先の先まで巡らす余裕はなかなか持てないと思います。
そんな時、検討の段階で一度で良いので「自分は、この家をペットのように家族の一員として迎え入れるんだ」と考えてみてください。もしかしたら、まだちょっと納得いっていないところも暮らしながら考えようと気持ちがスッキリするかもしれませんし、将来的なメンテナンスで考えておいた方が良いところを見つけられるかもしれませんよ。


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