性能を高めながら、存在感を消していく。ミニマルさを追求した水切り&換気材(前編)

「作り手の気持ち」第4回目は、1960年に大阪市城東区で創業した城東テクノ株式会社。企画部門の西岡さんと開発部門の吉冨さんにお話を伺いました。

同社は基礎と土台を絶縁し、住宅の耐久性を高める「キソパッキン」をはじめ、さまざまな住宅建材を手掛けるメーカー。水切りや換気材、点検口など、住宅になくてはならない重要なパーツを生産されています。

今回のインタビューでは、Noizlessでセレクトした「WM防鼠付シャープ水切り」「鋼板製 軒天換気材(軒ゼロタイプ 破風レス対応)」「WM垂れ壁用スリムオーバーハング」の開発の経緯について伺いました。前編・中編・後編の3回に分けてご紹介します。

 

ユニークな建材で長持ち住まいをささえる。

──城東テクノさんが製造している建材は、壁紙や床材などと違い、一般の人にはあまりなじみがないものが多い印象です。どんな特徴を持った建材メーカーさんなのでしょうか?

企画開発チーム・西岡さん〉当社は建築資材を扱っているメーカーですが、家を建てるお施主さんが私たちの会社名を知っていることはほとんどないと思います。私たちは「ユニークな建材で、長持ち住まいをささえます。」というスローガンを掲げていますので、まずはその意味について説明をさせて頂きますね。

「ユニークな建材」というのは、他社さんがあまりやっていないニッチな分野で商品開発をどんどんしていこうという当社の姿勢を現したものです。

次に「長持ち住まい」というのは、「人が生活する住まいは、丈夫で長持ちでなければならない」という信念を表現しており、「支えます」というのは、建材メーカーという立ち位置で住宅会社さんの家づくりを支援したいという気持ちを現しています。

当社は樹脂の廻り縁や巾木の製造からスタートしていて、その後、基礎と土台の間に入れる「キソパッキン」を発売しました。これは基礎を切り欠きせず基礎内に風を通すための部材で、1995年に起こった阪神淡路大震災を機に知名度が上昇。今も高いシェアを持っています。

 そのキソパッキンから派生し、床下点検口や基礎断熱工法用の部材、シロアリ対策のための部材、各種通気部材などへと商品のラインナップが広がっていきました。

住宅にはニッチな製品が数多く使われており、それらは大手建材メーカーさんや住宅会社さんが用意することが難しい分野です。とりわけ通気・換気に関係する部材は、まだまだ建材業界では種類が多くはありません。そこで当社では、通気・換気というニッチな分野で、より機能性が高い商品づくりに一層力を入れていこうと考えています。

 

製品に求められる“本質的な価値”を探す。

──キソパッキンから派生し、さまざまな建材を展開するようになったのですね。新しい建材を開発する上で、どのようにして既存製品の課題を見つけ出していますか?

〈西岡さん〉私たちが扱っている副資材と呼ばれる建材がどんどんコモディティ化している状況がありまして、これから紹介する水切りに関しても、通常の製品であれば形状も簡単で、金額勝負になってしまいがちです。

その中で、「製品にそもそも何が求められているのか?」というのを振り返り、本質的な価値を見つめ直すことを始めました。

それから、住宅会社さんに話を伺うと、それぞれの部材に求めることが会社によって異なることが分かりました。性能を重視する会社さんもあれば、それ以上にデザインが大事だという会社さんもいらっしゃいます。価格を最重視する声も聞こえてきます。

私たちが考える本質と住宅会社さんのニーズをマッチングさせながら、新しい製品の企画を考えていくのですが、もちろん全てのニーズを取り込むことはできません。

そうすると、どの住宅会社さんにも求められない製品になってしまうからです。そのような製品を、当社の中では「すき焼きカレー」と呼んでいます。

そのような中で、2017年に当社の外装部材を「GAISO・WM(WELL MACH)シリーズ」と名付け、機能性だけでなく意匠性も高い商品群としてブランディングすることを始めました。

 

合格点で満足せず、時間が許す限りブラッシュアップ。

──いろいろな角度から製品を見つめて課題を抽出しているのですね。画期的な製品を生み出すために大事にしていることはどんなことでしょうか?

〈西岡さん〉先程「住宅会社さんに話を伺う」といいましたが、当社では提案制度を採用しており、普段から営業部がお客様の声を聞いて社内に共有しています。そうして全国から集まった情報を私たちマーケティング部で選別を行います。

その中から新しい製品開発をする上で面白そうな話があれば、営業担当者と一緒に各地の住宅会社さんを訪れてさらに詳しくヒアリングを実施。そして、その会社さんが求める製品像が見えたら、開発部と一緒に徹底的に製作、ブラッシュアップをしていくんです。そうしてでき上がった製品は、同じような属性の住宅会社さんにも受け入れられる製品になります。しっかりターゲット設定をするのが大事なことですね。  

〈商品開発部・吉冨さん〉「こういうものがあったらいいな」という漠然とした要望を具現化していくのが私たち開発部の仕事ですが、その時には必ず、絶対外しちゃダメだというポイントや設計要件を出して頂いてから開発に着手するようにしています。それを守った上で、どのような形ができるのかを考える必要があるからです。

 試作した製品を見て頂き、評価が良ければそのまま進めますし、気になる点があればブラッシュアップを繰り返していきます。

お客様の要望に応えることはもちろん大事ですが、それだけでなく、品質や性能が他社よりも優れたものになるようにこだわっています。例えば、性能試験を1回クリアしただけで満足するのではなく、より良い製品に高められるように、時間が許す限り改善を行います。

それは私たちのこだわりなのですが、ついついそこを追求するがあまりスケジュールに遅れることもあり、悪い癖でもありますね(笑)。どこまでやるかは見極めなければならないですけど、コストバランスを考えながら、可能な限り品質を高めていきたいです。

 

- 前編はここまでです。次回の中編では、「WM防鼠付シャープ水切り」について詳しくご紹介します。

→コラム:性能を高めながら、存在感を消していく。ミニマルさを追求した水切り&換気材(中編)はこちら

 

西岡 京介
城東テクノ株式会社
営業統括部門 マーケティング部
戦略企画課 商品企画チーム 主任

吉冨 賢治
城東テクノ株式会社
営業統括部門 商品開発部
商品開発二課 課長