森を守り、木と共に生きる。環境に配慮された木製玄関ドア(中編)

ユダ木工株式会社の常務取締役・湯田茂人さんと広報・尾崎羽紗さんへのインタビュー。中編では環境に配慮した材料調達と製造プロセスについて伺います。

 

外材から地元産桧へシフト。循環型のものづくりに挑戦。

──ユダ木工さんの建具は100%国産材で、その大部分を地元中国地方の山から調達しているそうですね。

〈湯田さん〉以前は外材100%でしたが、2011年に国産材のドアを初めて作り、そこから国産材へとシフト。今ではドアに使う材料は国産材100%になっています。私たちの会社がある中国地方では杉と桧が植林されており、MIYAMA桧玄関ドアには名前の通り桧を使用しています。

杉は比重が0.3~0.4と軽く柔らかい材料ですが、それに対して桧の比重は0.45程度。数字で見るとわずかな違いに見えますが、堅さも重さもずいぶん違います。断熱や防犯などの機能が求められる玄関ドアは自重が大きくなりがちですが、桧はその点でもバランスがいいんですよ。適度な重さと堅さがあり加工がしやすい材料です。

そして、それが近くの山にあるというのがポイントです。

地元の山から切り出された丸太が並ぶ材木市場

 

──近くの山で採れる木を使う。その理由をもう少し詳しく教えて頂けますか?

〈尾崎さん〉ここからは私からご説明させて頂きますね。当社には「森を守り 暮らしに生かし 木と共に生きる」という企業理念があります。自然の摂理になるべく負担をかけず、循環の一部になる。そんなものづくりをするために「葉っぱの世紀のはじまり。」という言葉を掲げ、木製ドアづくりを通じて社会に対して何ができるかを考え行動しています。近くの山の木を使うことはその一環なんです。

元々外材から国産材へと切り替えるきっかけになったのが、2005年に現社長が初めて参加した地元の植林活動でした。当時は安価な外材をみんなが使っていましたが、それにより国産材の供給が落ち、日本各地で山が荒れ放題になっている。そんな現実を目の当たりにしたそうです。

当社は木を使ってドアをつくっている会社ですから、外材ではなく地域の山の木でドアづくりをすれば地域の環境に貢献ができると考えました。木を買う人、使う人がいれば、山に次の木を植えて育てることができます。そしてそのサイクルが地域の山を守ることにつながります。

さらに、山の木はダムのように水を蓄え、きれいな川をつくります。その川が海へと流れ、広島湾の良質な牡蠣を育てます。山の環境を守ることは川や海などの地域全体の環境にとってとても大事なことなんです。 

廿日市市の海に浮かぶ牡蠣養殖場いかだ

 

カーボン・オフセットの仕組みを使い、売上の一部を山に還元する。

──ドアがつくられ使われることで、山や海の環境が健全に保たれる。自然界の循環の中にある玄関ドアですね。

〈尾崎さん〉ただ木を切って売るのではなく、私たちはそれを木製ドアにすることで新しい価値を生み出しています。そして、私たちの理念に共感くださったお客様がユダ木工の木製ドアを使うことで、一緒に山を守ることができます。

それから、当社ではカーボン・オフセットの取り組みを昨年から始めました。植林・造林などのプロジェクトを行っている島根県雲南市吉田町の「たなべたたらの里」からクレジットを購入することで、削減しきれないCO2排出量を埋め合わせるという考え方です。

 

──植林の支援にも関わっているのですね。そのきっかけは何でしたか?

〈尾崎さん〉2021年に起こったウッドショックがきっかけです。ウッドショックによって国産材を使う流れが一気に進んだ時、次の世代のために山を育てる必要があると思うようになりました。しかし、その取り組みがどれくらい進んでいるのか、ユダ木工の中にいるだけでは分かりません。

そこで、一歩進んで直接山とのつながりを持とうと私たちは考えました。それが、カーボン・オフセットの仕組みを活用して木製ドアの売上の一部を山へ還元する取り組みです。今年はユダ木工が1年間に使用する桧と同じ数の苗木の金額を、カーボン・オフセットの仕組みを通じて山に還元しています。

さらに、今年の5月には私たちユダ木工の社員全員でたなべたたらの里に行き、植林活動を行いました。それにより「森を守り 暮らしに生かし 木と共に生きる」という企業理念を社員全員がより明確に共有できるようになりました。お客様にもさらにしっかりとメッセージを伝えられるようになったと思います。

社員全員で行ったたなべたたらの里での植林活動の様子 

 

ドアに使えない端材を燃料として活用。

──環境保全の取り組みの一つとして、端材も無駄なく使っていると伺いました。

〈尾崎さん〉ユダ木工の木製ドアは建築物の構造材を取った丸太の残りの部分を使うのではなく、丸太を丸ごと1本単位で買って納品して頂いています。製材をする際に皮が付いた外側の部分は製材所の方で廃棄するのが一般的ですが、この部分も一緒に納品をして頂き、それを当社の屋上で自然乾燥させています。

それをチッパーで粉砕し、自社の木材乾燥用のボイラーの燃料に使っています。そうして、1本の桧の丸太を無駄なく使い切るようにしているんです。
また、昔は節がある材料は使わないのが当たり前でしたが、私たちは「節があるのは自然なこと」と捉えています。枝で節埋めをして復元することで、そもそも端材を出さないようにする。そんなことにも力を入れています。

私たちは製品だけでなく、「製造プロセスがどういう価値を持つか?」という点も重要視しているからです。

粉砕された檜端材のチップ

 


- 中編はここまでです。次回の後編では、MIYAMA桧玄関ドアに詰め込まれた技術と想いを詳しくご紹介します。

 

→コラム:木を守り、森と共に生きる。環境に配慮された木製玄関ドア(後編)はこちら

→Noizless  MIYAMA檜玄関ドアシリーズ 製品ページはこちら


湯田 茂人(ゆだしげと)
ユダ木工株式会社 常務取締役
プロフィール/ 1965年広島県生まれ。
近畿大学 工学部 建築学科卒。
ゼネコンで現場管理を経験後1990年からユダ木工現職に就く。
断熱ドア・防火ドア(防火設備)・玄関引き戸等の研究開発などに長年従事
 
尾﨑 羽紗(おざきうさ)
ユダ木工株式会社 営業部 広報
プロフィール/ 1994年広島県生まれ。
広島市立大学 芸術学部 油絵学科卒。
ユダ木工入社後、WEBSNSでの情報発信を担当する。