Noizless誕生 創刊号特集から
知ることで、選べる。
本当に住みたい家をつくる。
家づくりの「民主化」を目指す「ノイズレス」
建材の開発から住宅設計まで行う森田アルミ工業から、建築パーツの新しいセレクトブランド[Noizless(ノイズレス)]が誕生しました。
家を構成する建築パーツを一覧化し、それぞれのパーツごとに森田アルミ工業のプロダクトデザイナーと建築士がメーカーの垣根を超えてセレクトしたカタログ。これから家づくりを始める人に届けたい一冊です。
なぜノイズレスが生まれたのか。その背景を見つめると、施主が抱える家づくりの課題が見えてきました。ノイズレス開発メンバーがその誕生のプロセスを振り返りながら、家づくりの本質について考えていきます。
─ 森田アルミ工業のモノづくりとは
── まず最初に森田アルミ工業について教えてください。これまでどのようなものづくりを行ってきたのでしょうか。
森田 1972年に森田アルミ工業はベランダ手すりや面格子などをつくるアルミニウム加工業者として大阪で創業しました。数年後には自社で企画したアルミ外部階段[ステアーズ]がヒットしたことをきっかけにオリジナルブランドの製品開発に注力するようになり、徐々に開発範囲をインテリアまで拡大してきました。
私が二代目に就任してからは、デザインに注力して、社内でプロダクトデザイナーの育成に力を入れていきました。2007年には新たなヒット商品として室内物干しワイヤー[pid]が誕生し、その後いくつものデザイン賞を受賞するまでになりました。素材もアルミ一択ではなく樹脂や布、ガラス、鉄などを使ったりと幅を広げて、あらゆる建材の企画・デザイン・設計・製造・営業まで、一気通貫の体制で製品開発を行っています。
森田アルミ工業が大切にしているのは、製品自体が持つ「美しい造形」、そして問題を解決する機能や技術がそこにあること、そんな普遍的かつ新しい価値を世の中に提供していきたいという想いです。こうしたものづくりを続ける中で、プロダクトデザイナーであり営業担当の宇野さんから「設計事務所をつくりたい」と声があがりました。これが後のノイズレスの構想に繋がっていくというわけです。
─ 建築設計事務所の[レクト]の立ち上げ
── なぜ建材メーカーが建築設計事務所をつくるという発想に至ったのでしょうか?
宇野 私は元々製品の研究開発をしてきて、pid をはじめいくつかの製品開発を行ってきました。2015年に東京営業所を立ち上げて、商品数を増やしていくことになり、営業しながら製品開発のためのリサーチを行っていました。
顧客データを見ると、物干しなどインテリア製品は施主のみなさんに直接ご購入いただけますが、建材やエクステリアでは、圧倒的に戸建ての建築士の方に選んでいただいていることがわかりました。そこで建築士のみなさんのもとを回って営業しながら、間接的に施主からのフィードバックをもらったり、建築士としてどんな製品がほしいかとヒアリングしていたのですが、ある日ふと気がついたんです。自社に建築設計部門があれば、常にお客様の声を集めることができ、製品開発をする上で強みになるのではないかと。

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─ 施主の声から製品開発へ
──レクトからのレポートをもとに生まれた製品にはどのようなものがあるのでしょうか?
内藤 [fitbase lite]という樹脂製の小さい巾木(はばき)があります。巾木とは、床面に接する壁の下部に取り付ける部材のことです。家の広範囲を占める重要なパーツですが、床や天井、キッチンなど主要な部分に予算と時間が割かれるので、一般的には家づくりにおいて優先度は低くなります。
しかし中には「巾木はとにかく小さくしたい」というお客様がいらっしゃいます。そもそもデザイン性を優先するなら巾木はなくしたいパーツです。ところが施工が大変になるうえ、実用面でも掃除機をかけるときに壁が傷付いてしまう点でも必要性はある。だから小さい巾木のニーズがあるんです。
以前は弊社の製品で、アルミ巾木[albase][fitbase]を提案していたのですが、もう少し価格を押さえたシリーズがあればさらに需要があるだろうと、ホワイトの樹脂巾木 fitbase lite の開発に至りました。造作には手が出なくても、「プラス数万円で家全体の巾木が小さくなるなら」と選ばれるケースが多いです。
宇野 他社の巾木は30㎜で、森田アルミ工業の巾木は25㎜。たかがマイナス5㎜ですが、そこにニーズがあるというのは現場からの声ならではだと思います。
─[ノイズレス]の誕生
家づくりにおける課題解決
──レクトの立ち上げから、どのようにノイズレスへとつながっていったのでしょうか?
宇野 レクトからの声を通じて、次第に施主のみなさんが抱える家づくりの課題も見えてきました。ひとつは「調べることの作業量」。限られた数ヶ月間で、あらゆる建築パーツについて調べるのは途方に暮れる作業です。家づくりにこだわりを持つ人はなおさら調べる量が増えていきますよね。
内藤 もうひとつの課題は「知らないこと」です。振り返ると10年前はお客様から「巾木を小さくしたい」という声はありませんでした。この10年でブログやインスタグラム、ピンタレストなどのSNS の情報が発達して、お客様のリテラシーが上がっているのを日々実感しています。「スイッチをかっこよくしたい」「床の見切り材にもこだわりたい」など、年々細かいパーツの要望が聞こえてくるようになってきました。
ところが、たとえウェブに情報が溢れていても、人は気づいていることしか調べることができません。例えば、巾木を知っている人はより良い選択肢を探すことができますが、知らない人は調べることもなく、知らないうちに家ができていく。そして家が建ったあとに「なんで気が付けなかったんだろう」と後悔する。
宇野 家を構成する建築パーツすべてを知り、すべての製品をいちから比較検討するのは現実的には難しいものです。それならば、家を建てるのに必要な建築パーツをリストアップしたカタログをつくれないか。こうして生まれたのがノイズレスです。
こちらの内容は創刊号特集の一部を抜粋しています。
詳細はカタログを手に取ってご覧ください。
左/宇野健太郎 プロダクトデザイナー
うのけんたろう・1981年生まれ。大阪の一風変わった集合住宅『都住創』で幼少期を過ごす。2005年 東北芸術工科大学(山形)現プロダクトデザイン学科卒。同年から都内の建築設計事務所で不動産を経験。2007年 森田アルミ工業株式会社入社。
中/森田和信 代表取締役
もりたかずのぶ・・1971年生まれ。幼少期から絵に没頭し、学生時代からは音楽にのめり込む。その後ライブハウス等に就職し、ピアノ演奏や音響、照明、ライブ活動等を行う。
1998年 森田アルミ工業入社、2006年 代表取締役就任。
右/内藤正宏 一級建築士
ないとうまさひろ・1989年生まれ。山梨県甲府市の材木屋に生まれる。2014年 芝浦工業大学大学院理工学研究科建設工学専攻卒。同年 大手住宅系組織設計事務所勤務、2019年 森田アルミ工業株式会社勤務を経て、2021年株式会社レクトを設立。
