コンセプトは「ミュージアム」。なぜポーターズペイントは新たな「場」をつくったのか?(後編)

Noizless itemやインタビューコラムでも紹介させていただいたPORTER'S PAINTS(ポーターズペイント)さんの新ショールームが2024年7月に川崎市溝の口にリニューアルオープンしました。

本コラムではPORTER'S PAINTS JAPANを運営する株式会社NENGOの濱口さんに前編と後編の二回に分けて、なぜこのような新しい体験型ショールームをつくったのかを語っていただきました。

 

 

コンセプトは「ミュージアム」

新しい場をつくるにあたり、そのポテンシャルを最大化するために設定したコンセプトが「ミュージアム」です。ここにはレイヤーの異なる3つの意味を内在させています。 

 

1、新しい気づき、発見の場としてのミュージアム 

PORTER'S PAINTSを使っていただこうとされてる建築家、デザイナーの方々、また家づくり等を考えられている一般の方々が、ショールームにお越しになって、単に製品を決めて帰るだけではない場所にしたいと考えました。

美術館やギャラリーに行く目的、そこには明確に何かを決める事柄があるわけでも、何かを商品として持ち帰るわけでもなく、想定していない自身の価値観を捉え直す機会にしたり、気持ちをリセットして、どこか少し新たな自分として再始動するような感覚があるのではないでしょうか。ショールームも、リアルな場にお越しいただくことで、新たな気づきや発見を得られる場になると考えました。

照明の照度や輝度によって塗装カラーの違いが体験できる。photographer AKIRA NAKAMURA

 

2、アートの息吹き薫る大山街道 

この街としてのコンテキストに「アート」というものをあまり持ち合わせていないような印象がある溝の口から多摩川にかけてのエリアですが、実はそんなことはないのです。大山街道が昔から通っているこの界隈は、古くから多くの人が行き交う街であり、芸術もそういう所が起点になります。稀代のアーティストである岡本太郎が生まれ、 初の人間国宝となった陶芸家・濱田庄司の生家も大山街道筋です。

ショールームの入るBOILの1階にはダンススタジオがあります。川崎のアイデンティティにもなりつつある、ブレイキン、ダブルダッチは現代におけるアート的表現だと考えます。 

2階のショールームのスペースも、このアート的文脈を醸成していける場にするために「ミュージアム」という前提設定を重視しています。

廊下のニッチには濱田窯の陶器がディスプレイされている。photographer AKIRA NAKAMURA

 

3、PORTER'S  PAINTSにより生まれる可能性の空間

 塗装のショールームのため、壁や天井は様々な仕上げが施されていますが、結果として、その仕上げに囲われた空間が創出されます。具体的には8つのスペースがあります。それぞれショールームとしての機能を持ち合わせつつ、スペースとしての自由度は高い状態であるため、各種の展示や催しに活用することができます。

この場所を知っていただいた方々それぞれに、あそこはショールームであるという認知だけでなく、ミュージアム的な何かしらの可能性を持っている空間でもあると、認知いただくことでポテンシャルに制限をつけない取組みになっていくだろうと考えました。

イベント開催も想定したエントランスのフリースペース。photographer AKIRA NAKAMURA

 

濱口智明さん(株式会社NENGO・街つくり事業部マネージャー、一級建築士、宅地建物取引士) 株式会社ゼロワンオフィスにて住まいを中心に建築設計に携わったのち、株式会社エンジョイワークスにて自由設計住宅の設計開発や空き家再生による事業企画などを行う。2021年、株式会社NENGO・街つくり事業部に入社。100年後を見据えた街つくりのため、不動産と建築の両方にまたがり各種事業を展開中。https://nengo.jp/

 

 

リアルの場だからこそできること

コンセプトに複数の意味付けをすることで、重層的な居場所になることを意図しました。特にショールームというものがプロダクトの情報提供などとやや一方向的な機能になりがちなところを、より地域や来訪いただく人に対して、もっとやわらかく馴染み、時に主体的にも関わっていただける余地を残すことが、リアルな建築空間として、今の時代にはきっと必要なことだろうと考えました。 

ポーターズペイントで仕上げられた茶室。photographer AKIRA NAKAMURA

 

 

仕上げの解像度を高めてみませんか

ところで、家の仕上げを考える際、皆さんは、どこまで「解像度」を高めて考えられているでしょうか。壁であったら、クロス、塗装、左官、タイル、石材、木材・・・。カテゴリーだけでもいろいろあります。さらにカテゴリー毎にそれぞれいくつもの種類があり、さらに各種メーカー、各種製品と選択肢はひろがっていきます。

全てに詳しくなることはプロでも至難のレベル。その中でぐっと焦点を絞って興味のある1つだけでも解像度を高めてみると、家つくりの景色が変わってくることがあります。

仕上げのうち「塗装」は深掘りして解像度を高めるにはおススメのカテゴリーだと思います。例えば色彩の感覚を磨く(もっとライトに言えば好みの色を見つける)といったところから、インテリアの検討や部屋全体のバランスを整えることにも考えが繋がりやすい面があります。 

重なった引き戸自体が大判のカラーサンプルとして機能している。photographer AKIRA NAKAMURA

 

PORTER'S  PAINTSのショールームは、この仕上げの解像度を高めるためには打って付けの場所になると思っています。できれば、家つくりやお店つくりを計画し始めた初期段階で、一度お越しいただくのがベストタイミングでしょう。設計者さんであれば、お客さんと一緒に来られて、塗装の件に限らず、ざっくばらんに楽しくお話いただく時間にしてください。

会話は雑談でも良いのです。ペイントで仕上がった空間でしばらく過ごしてみることで得られる「体感」がそこにはあります。ショールームに来た、ではなく、街のちょっと面白い場所に来てみた、この感覚が、個々人のインスピレーションを沸かせ、暮らしを豊かにし、さらには、ある街が楽しくなる瞬間になると考えています。

以上で、株式会社NENGO濱口さんのPORTER'S PAINTS新ショールームについてのコラムは終了です。
壁面から天井まで様々なバリエーションの塗料で仕上げられた空間は圧巻です。自然光や照明、仕上げによって様々な表情を見せるPORTER'S PAINTSの魅力が散りばめられた想いの詰まったショールームだと感じました。様々な塗装についての相談や塗装体験もできますので、ぜひ下記PORTER'S PAINTSさんサイトより詳細ご確認ください。

〈PORTER'SPAINTS 新ショールーム詳細はこちら〉

https://porters-paints.com/distributor/showroom/