【暮らしの中の建築パーツ】生活感を排除したホテルライクなリビング(中編)
床材はホテルをイメージした無機質なフロアタイル
玄関ホールの右手にある建具を開けると、そこは16畳程のLDK。光をたっぷりと採り込めるように、庭側の天井が高くなっているのが特徴です。
床は玄関ホールと同じグレーのフロアタイルで統一されており、それがモダンなホテルのような雰囲気を醸し出しています。
〈奥様〉 最初は木の床を考えていたんですけど、壁付けの収納の扉をすべて木にしたかったので床はフロアタイルにしました。
私はバリ島が好きで、リビングをリゾートホテルの客室のような雰囲気にしたかったので、色は少し暗めのものを選んでいます。張り上がるまでは暗くなり過ぎないか少し心配でしたが、でき上がったらこの色で良かったなと思いました。
フロアタイルは傷が付きにくいですし、付いても目立ちにくいのがいいところですね。息子が3歳なんですが、おもちゃの車で走り回っていても傷の心配がありませんし、飲み物をこぼしても染みになりません。ずっときれいなままですね。
夏はひんやりして気持ちいいですし、冬も暖房で暖まれば快適です。
〈齋藤さん〉 全面フロアタイルで仕上げるというのは僕たちとしても初めての試みでした。はじめに長尺塩ビシートとフロアタイルが候補に挙がっていて、モルタル調のフロアタイルLYT-83443(現品番:LYT-84149)(リリカラ)を選んで頂きました。
フロアタイルは無垢フローリングなどと比べると傷が付きにくいですし、ワックスで表面を保護することもできます。比較的コストが安いのも特長ですね。
メンテナンス性が高いので、僕たちはキッチンや脱衣所などでよく使っている素材です。
壁一面の造作収納は、重厚感のあるウォールナット仕上げ
H邸のLDKで特に目を引くのが、西側の壁一面に造作された大容量の収納とキッチンです。面材はすべて表情豊かなウォールナットの突板(つきいた)で仕上げられています。
〈齋藤さん〉 基本設計の段階で、壁の端から端まで造作のキッチンと収納にすることが決まり、Hさん夫婦と話し合いながら面材に木を使うことにしました。
キャビネット部分は大工さんによる造作で、扉だけを建具屋さんに制作して頂いています。面材のウォールナットはメトロポリタンウオールナット(安多化粧合板)という商品で、安多化粧合板さんは白太の位置や配分を打ち合わせしてつくって頂けるのが特徴です。
この白太が入ることで造作家具でありながら、アクセントウォールのような仕上がりになっています。
ウォールナットの家具は色が濃いので存在感が強くなるのですが、床がグレーのフロアタイルなのでバランスが取れると思い、この樹種をご提案させて頂きました。
〈奥様〉 壁一面を収納にしたいということと、濃いめの色の木でホテルっぽい雰囲気にしたいということを伝えて、齋藤さんに素敵な材料を選んで頂きました。この白い部分がかっこいいですね。
〈ご主人〉 奥行が650mmあるので、いろいろなものが収納できます。子どものおもちゃはもちろん、腹筋台や布団も入っているんですよ。内部は可動棚になっているので使い勝手がいいですね。
〈奥様〉 キッチンに近い場所は食器棚になっていたり、収納の中は自由に使うことができます。それから、Plootさんの見学会に行った時に、エアコンがルーバーで隠してあるのを見て、それも希望し、収納と一体にそのスペースを造って頂きました。生活感が隠れていいですね。
toolboxのパーツを組み合わせた主張しない造作キッチン
収納と一体になったキッチンは、レンジフードやステンレス天板などが目立たないように造作されており、幅は約2.4mありますがミニキッチンのように存在感が抑えられています。
〈齋藤さん〉 LDKとしては少しコンパクトな空間なので、それを成立させるためにも壁付けの造作キッチンにしています。造作キッチンというとコストが高くなると思われがちですが、既製品と比較してコストアップしないようにシンプルな造りにしています。
ステンレス天板はヘアライン仕上げを選んでいただきました。ステンレス天板の仕上げはバイブレーションとヘアラインがありますが、これはお好みでいいと思います。バイブレーション仕上げの方が傷が目立ちにくい言われますが、実際のところどちらも傷は付きますので。
造作キッチンは空間に合わせて造り込めるのが魅力ですが、住設メーカーさんのシステムキッチンは、天板に傷が付きにくい加工がされているものを選べたりします。そういう特性の違いを踏まえて、造作キッチンかシステムキッチンかを検討することが大事ですね。
天板、シンク、水栓、レンジフード、食洗機、IH、キッチンパネルなど、キッチンのパーツはほとんどtoolboxのものを採用しています。
キッチンパネルは“塗装のキッチンパネル”という製品で、ツヤのないマットな質感が空間になじんでいます。
〈奥様〉 空間の中でキッチンが目立つのが嫌だったので、なるべく「キッチン感がないキッチン」を希望しました。広さも十分ですし、とても使いやすいですね。冷蔵庫は左手の引き戸を開けたところに置いているので、冷蔵庫との行き来もスムーズです。
– 中編はここまでです。次回の後編では、H邸の壁紙やブラインドなどをご紹介します。
【この記事で紹介した建築パーツ】
耐摩カラーSGL®(日鉄鋼板株式会社)
ジエスタ2(株式会社LIXIL)
セランガンバツ
アイアン階段(溶融亜鉛めっき仕上げ)
LYT-83443(現品番:LYT-84149)(リリカラ株式会社)
メトロポリタンウオールナット(安多化粧合板株式会社)
キッチンパーツ各種(株式会社TOOLBOX)
【DATA】
H邸
新潟市秋葉区
延床面積 87.58㎡(26.49坪)
構造 木造軸組工法
竣工年月 2022年12月
設計・施工 株式会社Ploot
株式会社Ploot
https://ploot.jp/